大都市には個性あふれる地区がひしめいています。トロントも例外ではなく、独特の雰囲気や佇まいのある個性的な地区が集まっています。午前中はショッピング街をぶらつき、ランチタイムには歴史あるマーケットを散策、夜は人気のバーが軒を連ねるストリートで楽しむ――。そんな過ごし方ができるのも、大都市トロントならではの醍醐味。
そこで、トロントの人気地区トップ5をご紹介し、それぞれの地区の魅力に迫ります。

ディスティラリー地区 写真提供:Clifton Li
旧市街とディスティラリー地区
トロント市の大部分は、その歴史を旧市街にまで遡ることができます。6つの地区の集合体であるトロント市は、何世紀も前に建てられた古い建物に、流行の最先端を行くショップやレストランが進出するなど、すっかり活気を取り戻しています。
旧市街には、味にうるさい食通たちが集まるセント・ローレンス・マーケットがあります。すでに1803年には、マーケットの形ができあがっていたそうで、4年前に『ナショナル・ジオグラフィック』誌で世界のベストマーケットに選定されています。マーケットでは、新鮮な農産物やチーズなど、色とりどりの食材が並び、おいしそうなにおいが漂うマーケットをぶらぶらと歩きながら試食を楽しんだり、おみやげや衣類、ジュエリーなどを扱う地元の専門店をまわりながら品定めしたりと、楽しみは尽きません。
マーケットからほど近いところにあるのが、ディスティラリー地区。ここは、車の乗り入れが禁止された歴史的建造物が立ち並ぶエリアで、現在では、観光客に喜ばれそうなショップなどが集まっています。この地区はビクトリア時代の歴史ある建物が多く、古い建物自体はそのままに、内部のリノベーションにより、新しい感覚の街に生まれ変わっています。歴史を感じさせる赤レンガの壁の建物に足を踏み入れると、現代的な料理が生み出され、アートギャラリーやパフォーマンスシアターでは、年間を通じてさまざまなイベントが開催されるなど、活気に満ちあふれています。
旧市街の街歩きの際にぜひ訪れたいのが、グッダーハム・ビルディングです。通称「フラットアイアン・ビルディング」と呼ばれる同ビルは、幅の狭い赤レンガ造りの構造で、周囲の高層ビルとは明らかに違う独特の姿とあって、SNS映えすると人気の写真スポットになっています。

オンタリオ州トロントにあるルマ・レストランとTIFFベル・ライトボックス(映画館)
劇場街
舞台芸術やスポーツ、人気観光スポット、高級レストランなら、その名のとおり、劇場街と呼ばれる地区がおすすめです。
日中は、CNタワーからリプリーズ・アクアリウム・オブ・カナダまで、トロント市でもトップクラスのスポットで楽しみ、夜はカナダ屈指の人気レストランで過ごせるのは、この地区ならではの魅力です。また、ゲーム好きなら、The Rec Roomでゲームの腕を磨いてみるのもいいでしょう。
ほかにも劇場街には、ありとあらゆる見どころやアトラクションがそろっています。劇場街の街歩きの起点としておすすめは、カナダ・ウォーク・オブ・フェームの散策。食事は、ペルー料理と日本料理のレストラン「Chotto Matte(チョット・マッテ)」で。続いて立ち寄りたいのが、「ホッケーの殿堂」。カナダの国民的スポーツであるアイスホッケーの情報がたっぷり詰まった記念館で、体験コーナーもあります。

ヨークヴィル地区 写真提供:www.torontowide.com
ヨークヴィル地区+アネックス地区
かつてはヒッピーたちの街だったヨークヴィル。今では最新トレンドを発信するファッションの街として広く知られています。ブロア通りは、ティファニー、シャネル、エルメスなど高級ブランド店が立ち並ぶことから、「ミンク・マイル」の別名もあります。この通りは、華やかなブランド店と並んで高級レストランも集中しており、上流社会御用達の街とされています。
そんな高級地区と背中合わせにトロント大学のキャンパスが広がっていると知って驚く方も少なくありません。学生にとって高級ブランドもオートキュイジーヌ(高級フランス料理)も無縁の存在。そこで学生たちは、隣接するアネックス地区に繰り出します。
アネックス地区の人気や独特の雰囲気を支えているのは、周辺に暮らす大学生たち。この辺りは、カフェや劇場、書店、ギャラリー、レストラン、バーが密集していて、昼夜を問わず、おしゃれ好きな若者たちで賑わっています。この地区が特に活気付くのは、夏。店頭にテラス席が続々と設置され、街の空気を肌で感じながら食事を楽しむことができます。

ケンジントン・マーケット地区
チャイナタウン地区+ケンジントン・マーケット地区+オンタリオ美術館(AGO)地区
ケンジントン・マーケットは、トロント中心部で驚くほどの多様性に富んだストリート型マーケット。長い歴史の中でカリブ海諸国、南アメリカ、ヨーロッパ、ベトナムからの移民がこの地区に定着した結果、それぞれの文化がさまざまな形で反映されています。レストランやカフェ、古着店、さらには活気あふれるマーケットの露店まで、個性ある店がひしめき合い、豊かな多様性を生み出しています。
ケンジントン・マーケットのすぐ南には、トロントのチャイナタウンがあり、街を歩けば、アジア系の人々の文化を体感できます。中国料理、日本料理、タイ料理、ベトナム料理などアジアの味を本格的なレストランで堪能したら、マーケットに立ち寄り、国際色豊かな農産物やこの街ならではの商品、おみやげなどのショッピングを楽しみます。チャイナタウンの醍醐味をとことん味わうのであれば、旧正月(春節)がおすすめです。旧暦なので時期は年によって異なりますが、概ね1月下旬から2月上旬ごろに当たり、2026年は2月17日。街中が春節を祝い、ドラゴンや中国獅子舞が練り歩きます。
この地区まで来たら、オンタリオ美術館に立ち寄ることもお忘れなく。実に9万点の作品を所蔵しています。北米最大級にしてトップクラスの美術館に位置付けられ、カナディアン・アートに関しては世界最大のコレクションを誇るほか、ルーベンス、ゴヤ、ピカソ、レンブラントといった巨匠らの作品もあります。

クイーン・ストリート・ウエスト地区
クイーン・ウエスト地区+キング・ウエスト地区+リバティ・ビレッジ地区
トロントでもとびきりセンスのいい若者たちが集まるクイーン・ウエスト地区。歴史的な建物が立ち並ぶ地区に、さまざまなショップ、数えきれないほどのアトリエやデザインスタジオ、多彩なライブハウス、洗練されたグルメスポットなどが集まっています。街を歩けば、裏通りにひっそりと佇むギャラリー、トリニティ・ベルウッズ・パークで賑やかな演奏を披露するドラムサークル(打楽器を持ち寄った人々が輪になって即興的に演奏やダンスを楽しむ活動)、ザ・ドレークなどアート志向のホテル、ストリートアートの中心地「グラフィティ・アレー」など、思わず見入ってしまうシーンがあちらこちらに。この地区は、どの風景を切り取っても、SNSのプロフィール写真の背景に使えそうなシーンばかり。特にクイーン・ウエスト西側は、『ヴォーグ』誌に「世界屈指の最高にクールな地区」と取り上げられたのもうなずけます。
ファッションに敏感な人々が集まる地区とあって、すぐ隣のキング・ウエスト地区もトロント有数の人気ショッピングエリアとなっています。かつてトロントの繊維産業の中心地だったキング・ウエスト地区。今では、工場だった建物を活用して、ファッション・ブティックなど、さまざまなショップが進出しています。
リバティ・ビレッジ地区も元々は工場街でしたが、今やトロントの都会に暮らす若いビジネスパーソンに人気のエリアとなっています。かつて工場として使われた建物をリノベーションしたレストランやバー、ショップ、アパートなどが立ち並びます。時代は変わって、IT系のスタートアップやデジタル系の代理店、広告会社などが進出しても、この地区に昔から続く〝職人魂〟の灯は消えていません。
トロントには、人気の地区がほかにもたくさんあります。以下のリンク先では、トロントのダウンタウンに関する詳しい情報を発信しています。
トロントには、人気の地区がほかにもたくさんあります。以下のリンク先では、トロントのダウンタウンに関する詳しい情報を発信しています。