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カナディアン・カヌー博物館が生まれ変わってオープン

カナディアン・カヌー博物館が生まれ変わってオープン

カヌーと言えば、カナダのシンボルの1つ。そんなカヌーをテーマにした施設、カナディアン・カヌー博物館外部リンクタイトルeがリニューアルオープンします。数年前に閉鎖されていた同博物館ですが、移転・再オープンに向けて着々と準備を進めています。新たな所在地は、オンタリオ州トロントから118キロほどのピーターボロにあるリトル・レイク湖畔(住所:2077 Ashburnham Drive)です。この最新の文化施設は、カナダ国民にとって非常に重要な意味があるもので、夏の終わりから初秋にかけてオープンの見込みです。願わくば、「カヌーの日」(6月26日)に間に合ってくれるのがベストですが。
奥が深いカヌーの世界:カナダでは、昔の毛皮貿易やボヤージャーと呼ばれる毛皮商人の姿とカヌーを重ね合わせる人も少なくありませんが、先住民にとっては不屈の精神、復興、自主独立のシンボルであることをご存知でしょうか。カヌーは、簡単には語り尽くせないほどの複雑な歴史があり、カナダという国と切っても切れない関係にあるのです。同博物館外部リンクタイトルeの学芸員、ジェレミー・ワードによれば、「カヌー1つをとってみても、水路との歴史的な関係を思い浮かべる人もいれば、オリンピックで活躍する最新のハイテク機能の話題もあります。また、先住民の文化再興、誇り、忍耐の象徴として語られることもあります。いずれにしても、カヌーは、私たちを取り巻く環境、他者との関係、自分自身を改めて見つめ直すきっかけとなります」

Canoe Museum - Lett Architects Inc.

物語の宝庫:カナディアン・カヌー博物館は、カヌー、カヤックなどパドル(櫂)で前進するタイプの舟艇を対象とした世界最大のコレクションを20年以上にわたって展示してきました。収蔵する標本数は600点以上を数え、それぞれにまつわるさまざまな物語は、カナダで受け継がれている遺産の重要なひとコマと言えます。2013年には、カナダ議会上院で、同博物館が国の重要文化財外部リンクタイトルeであると宣言されました。しかし、それほど重要な存在でありながら、以前の施設は、用途に適したスペースや用地面積が乏しく外部リンクタイトルe、博物館としての限界を露呈していました。せっかくの膨大なコレクションのうち、実際に展示されていたのは全体の20%に満たず、水上での催しや企画も限られていました。

集いの場:移転先の新施設は、リトル・レイクを見渡す2万平方メートルの敷地を確保し、トランス・カナダ・トレイル外部リンクタイトルe(カナダ全土を結ぶ世界最長の多目的自然トレイル)とも接続しています。周囲には公園が点在し、カヌー講座などアウトドア企画を含め、地域の集まりの場としても利用されます。また、同博物館は、政府が先住民と交わした第20条約にあるミチ・サーギーグ族の領地内に位置するため、施設内では、英語・フランス語とともにミチ・サーギーグ族の言葉であるアニシナーベ語方言も使用されています。自然な流れを生かす:博物館の建物のデザイン外部リンクタイトルeは、オンタリオ州を拠点に活動するレット・アーキテクツ外部リンクタイトルeが監修したもので、クラフツマンシップを前面に打ち出し、自然の要素を生かして、この土地とカヌーづくりの接点をクローズアップしています。

2階建てで延床面積6040平方メートルの館内には、しっかりと管理された環境で舟艇を展示するコレクション・ホール、1540平方メートルの展示ホール、湖畔のイベントセンター、大人も子供も楽しめるカヌーづくり工房、バリアフリーの図書館・調査研究室、暖炉や湖畔のテラス席も備えたカフェなどがあります。博物館から直接水上へと接続していて、ドック(船着場)のほか、バリアフリーの乗り場が整備されており、すぐに出艇できます。

Canoe Museum - Lett Architects Inc. 

シンボル誕生:カヌーは何千年も前から使われており、ルーツは世界のさまざまな地域にあると言われますが、カナダの先住民によってカヌー建造法が確立しました。19世紀までイースタンウッドランド(現在の米国北東海岸、カナダ最東部の沿海州と呼ばれるニューブランズウィック州、ノヴァスコシア州、プリンスエドワードアイランド州から五大湖西側までに広がるエリア)に暮らす先住民は、基本的にカヌーを使って水上移動していました。毛皮貿易時代には、ボヤージャーと呼ばれる毛皮商人がこの伝統的な舟艇を使って河川や水路を縦横無尽に動き回っていました。フォルムと機能性:カヌーの形状、サイズ、素材には、地域の多様な先住民文化や土地との関係が反映されています。カナディアン・カヌー博物館は次のように説明します。「舟艇の歴史を振り返ると、先住民のカヌーは、その優美さも機能性も究極の姿と言えます。すべての部材が天然素材を使用しているので、役割を終えて廃棄する場合には、再び自然に返ります」また、カヌーは、主権、復活、不屈の精神の象徴でもあります。現在、先住民は、カヌーづくりや先祖伝来の移動経路をカヌーでたどる活動を通じてカヌーの再活用外部リンクタイトルeの動きが広がっています。

必見のコレクション:カナディアン・カヌー博物館のコレクション外部リンクタイトルeは、広大な西海岸のヒマラヤスギを使った丸木舟、さまざまなスタイルのカヤック用船体布、バークカヌー(樹皮で作るカヌー)など、カナダ各地の先住民文化を色濃く反映した舟艇が集められています。また、ピエール・トルドー元首相(現トルドー首相の父)が所有していたカヌーや、カナダから1947年にエリザベス女王とフィリップ殿下に、1981年にチャールズ皇太子・ダイアナ妃に献上された「ロイヤル・カヌー」もあります。

カヌーの旅:博物館のリニューアルオープンも待ち遠しいですが、カヌーを体験し、カナダの広大な風景を楽しむ方法はいくらでもあります。パドリングが体験できる場所はどの州にもあり、ガイド同行のツアーに参加するもよし、自分のペースでのんびり楽しむもよし。例えば、人気のルートとしては、ノースウエスト準州のナハニ川。洞穴が点在する渓谷や山脈を縫うように進むと、堂々たるバージニア滝(高さはナイアガラの滝の2倍)を通り過ぎるルートがあります。また、カナダ自然保護河川であるオンタリオ州のミシナイビ川は、穏やか流れと美しい景観の中にも、難所の急流があります。ブリティッシュ・コロンビア(BCのボーロン・レイクス・サーキットは、カナディアン・ロッキーを間近に見上げる氷河湖を渡ることができます。マナーを守って楽しいパドリングを:環境へのダメージを残さない」原則外部リンクタイトルeをしっかり守るとともに、先住民の歴史や伝統への知識を深め、カナダならではの広大なスペースを楽しみたいものです。カヌーの旅の前に調べておきたいこと:これからカヌーで乗り出そうとしている場所は伝統的に誰の土地なのか思いを巡らせてみましょう。現地を訪れるときの約束事をご存じですか? 現地でパドリングを楽しむ際に守らなければならない作法・ルールとは?  (答えはこちら外部リンクタイトルeもっと知りたい:カナディアン・カヌー博物館について、代表理事のカーロイン・ハイスロップが詳しい情報を発信しています。