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自然界に暮らすホッキョクグマの観察と保護活動

自然界に暮らすホッキョクグマの観察と保護活動

世界にはさまざまなクマがいますが、中でも最大とされるのがホッキョクグマ。オスの成獣は実に体重800キロにもなります。そんなホッキョクグマは、カナダ北部に暮らす先住民にとってとりわけ大切な動物とされています。北極のシンボル的な存在であるホッキョクグマは、気候変動や汚染など環境問題の深刻度外部リンクタイトルeを示すバロメーターとして世界が注目しています。
美しい姿:ハッとするような圧倒的に美しい佇まいのホッキョクグマは、ポスターやカレンダー、SNS投稿などを飾ることも少なくなく、愛らしいイメージが確立しています。いくら愛らしいからと言って、ホッキョクグマをハグしようなどと思う人はいないと思いますが、知れば知るほどに魅力あふれる動物であることも確か。大自然の中で安全を確保しつつ、責任ある行動を取りながら観察できる機会がたくさんあります。

海が遊び場:ホッキョクグマは、海を覆う氷の上外部リンクタイトルeで大半の時間を過ごします。つがいの相手を探すのも、子育ても、餌を探すのも、眠るのも、すべて氷上なのです。ところが、気候変動の影響で海氷が急激に薄くなっていて、ホッキョクグマの将来が脅かされています。ホッキョクグマの個体群調査によれば、マニトバ州やオンタリオ州、ヌナブト準州南部などでは陸上で暮らす時間が長くなるため、人間との摩擦を生む可能性があります。
ご存知ですか:ホッキョクグマ(現地に住む先住民・イヌイットの言葉であるイヌクティトゥット語では「ナヌーク」)の手のひらだけでもディナー皿ほどの大きさ外部リンクタイトルe。これだけの大きな前脚・後脚で何百キロにもなる巨漢の体重をバランスよく支えているからこそ、氷上で転倒しないのです。目は3層のまぶたで保護されていて、第3のまぶたは、雪や氷のギラギラとした照り返しから瞳を守っています。北極圏の食物連鎖の頂点に立つホッキョクグマは、主にアザラシやセイウチ、ベルーガ(シロイルカ)を主食としています。

深い関係:先住民は、ホッキョクグマの健康な個体群の維持に積極的に取り組んでいます。ホッキョクグマの狩猟は、カナダ北部の先住民に先祖代々伝わる伝統外部リンクタイトルeの1つで、狩猟の掟が極めて厳格に定められています。先住民は、歴史的にホッキョクグマを狩猟の獲物にしてきました。毛皮や肉を生かして過酷な気候を生き抜き、狩猟ガイドや革製品・手工芸品などの販売で生計を立てるなど、生活に不可欠な存在となっています。

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世界のホッキョクグマの大多数がカナダに生息:世界には2万5000頭のホッキョクグマがいると見られ、このうちカナダには約1万7000頭が生息していることから、カナダはホッキョクグマ保護外部リンクタイトルeに多額の投資をしています。ホッキョクグマの保護活動は、州・準州・地方の各野生鳥獣管理委員会が協調して担当しています。2011年にはホッキョクグマが絶滅危惧種法外部リンクタイトルe(SARA)の保護対象種に指定されました。以来、監視活動の予算が拡充された結果、最新の個体数推定の精度が向上し、管理・保存措置の指針づくりに役立っています。さらに、収穫管理に関する科学的助言や先住民の伝統的知識を生かした持続可能な収穫のための数量規制を実施すること、国際・州間取引に関する野生動植物保護・規制外部リンクタイトルe(WAPPRIITA)により、ホッキョクグマ生体やホッキョクグマの毛皮・狩猟記念物の輸出入を規制すること、ホッキョクグマに重要な生息域を対象に国立公園・国立野生動物保護区・海洋動物保護区、州立・準州立公園外部リンクタイトルeなどの形で保護区域を指定することなどが挙げられます。

マニトバ州チャーチル:世界のホッキョクグマの首都外部リンクタイトルe」と呼ばれるマニトバ州チャーチルは、ハドソン湾の結氷を待ちわびるホッキョクグマが集まってくるとあって、野生のホッキョクグマ観察に理想的な場所です。1000頭近いホッキョクグマが生息するチャーチルは、この哺乳類最大級の大迫力の野生動物を観察できるベストスポットなのです。チャーチル周辺には、ホッキョクグマを安全に責任ある方法で観察する手段がいくつかあります。ベストシーズン:ハドソン湾に「大寒波」が訪れる10月中旬〜11月中旬は、ホッキョクグマ観察のベストシーズン。こうした体験は機会が限られているため、定員に達して受付終了となることも珍しくありません。そこで早めに計画を立てて、早い時期に予約しておくことをお勧めします。

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ホッキョクグマ観察ツアー4選

・電動ツンドラ・バギー:フロンティアーズ・ノースでは、独自の「ツンドラ・バギー」(特注の全地形対応特殊車両)で北の険しい大地を走行する観察ツアーを実施しています(2021年からは電動型のツンドラ・バギーを新たに投入)。同社の「クラシック・チャーチル・ポーラーベア・アドベンチャー外部リンクタイトルe」と銘打ったツアーは、チャーチルや周辺地域の野生動物を総合的に観察できるもので、行程には、チャーチル野生動物管理区域(CWMA)で区域内をうろつくホッキョクグマを観察する2日間のツンドラ・バギー移動が含まれます。ほかにも、イヌイットにゆかりのある膨大な文化遺物コレクションを所蔵するイサニタク博物館外部リンクタイトルeや、伝統的な犬ぞりも楽しめます。プラン:このツアーは、9月から11月の期間に実施されており、5泊の日程です。

© Frontier North Adventures

・ハイキング:チャーチル・ワイルド主催の「アークティック・ディスカバリー外部リンクタイトルe」と銘打ったサファリ・ツアーは、ハドソン湾南部の生態系や野生動物、歴史にスポットライトを当てます。このツアーの中心は、4日間のツンドラ地帯を歩くガイド同行ハイキング。ホッキョクグマを始め、アメリカクロクマやオオカミ、ムースなど、北極圏の自然生息地に暮らす野生動物が観察できます。旅程のほとんどの日が5〜10キロの適度な徒歩移動があり、ツンドラをテーマにした食事、オーロラ観賞、拠点となるナヌーク・ポーラーベア・ロッジ外部リンクタイトルeでの説明会などがあります。プラン:このツアーは、7月〜8月に実施されており、8泊の日程です。

・ヘリコプター:ハドソン・ベイ・ヘリコプターズ外部リンクタイトルeでは、大空に舞い上がり、雪に覆われた一帯を見下ろし、ホッキョクグマを観察するツアーを開催しています。ヘリコプターから見下ろすタイガ(亜寒帯林)、ツンドラ、北方林には、海が結氷するのをじっと待ち侘びるホッキョクグマの姿が。なお、飛行ルートは、ホッキョクグマの移動パターンに合わせて毎日調整しています。この空中散歩では、カリブーやアザラシ、ホッキョクギツネなど北極圏ならではの野生動物を見かけることもあります。プラン:ツアーの所要時間は60〜90分間です。

・動物園チャーチルまで足を運べなくても心配無用。ウィニペグのアシニボイン公園自然保護区には、魅力いっぱいの動物園「ジャーニー・トゥ・チャーチル外部リンクタイトルe」があります。カナダ北部・北極圏を彷彿とさせるさまざまな環境や動物観察エリアのほか、生物多様性や気候変動、環境保全に関する多彩な情報が学べるインタラクティブ・ディスプレイも随所にあります。また、「北極圏への入り口」(Gateway to the Arctic)というエリアもあります。トンネル型の水槽から上を見上げると、ホッキョクグマやアザラシが泳ぐ様子をあたかも海底から眺めるような珍しい光景が楽しめます。プラン:90分間の水族館裏側探検(バックヤード)ツアーなど、さまざまなツアーが企画されています。