多様な民族が入り混じる「多文化主義」の国カナダ。その中で、他の国から来たのではなく、カナダの大地に根ざした先住民の文化は、カナダだけのユニークなものだ。カナダに旅したら、各地の先住民の文化にも是非出会ってみたい。
14,000年前からカナダに住み続けてきた先住民は、それぞれの土地に様々な「遺産」を残している。ユネスコの世界遺産に登録されているものも数多い。また、カナダ史の礎となった毛皮交易で、先住民とヨーロッパ系の人たちが交流した「交易砦」には、コスプレのスタッフが案内する「歴史のテーマパーク」となっているところも少なくない。そうした「カナダ史のふるさと」を探訪し、カナダの生い立ちを体感しよう。
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カナダの大自然を、野生の動植物についての深い知識に頼って生き抜いてきた先住民たち。彼らの暮らしと文化の核にはいつも「自然」があった。そんな先住民の案内で自然に分け入り、野生動物や野鳥を探索したり、彼らの自然観に触れたりすることは、他では得られない貴重な体験だ。カナダには、ホッキョクグマ(シロクマ)、ハイイログマ(グリズリー)、クロクマ、ヘラジカ(ムース)、ビーバー、クジラ、アザラシなど、独特の野生動物が多く住む。動物だけではなく、薬草や食用植物など野生の有用植物について現地で学ぶのも、貴重な体験。
カナディアンカヌー、カヤック、スノーシューなど、カナダ発のアウトドア文化は、もともと先住民の暮らしから生まれた。今も狩猟や漁を生活の糧とする先住民は少なくない。そうした活動が、伝統的な暮らしの中に根付いてきた先住民と一緒に釣り、カヌー、スノーシューによるトレッキングなどのアウトドア活動を楽しんだり、独特のアウトドア術を教わったり。カナダの大自然との一体感を味わう旅。
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カナダには「先住民料理」のレストランが点在している。極北のカリブー(トナカイ)やホッキョクイワナ、太平洋岸のサケ、大平原のバイソン(野牛)など、地域の先住民が伝統的に利用してきた食材を、先住民の料理人が現代風にアレンジして供してくれる。カナダの大自然が生んだローカル色豊かな先住民料理は、歴史ロマンと大地の香りがスパイスだ。
先住民の集落で、ティーピーやイグルー、ロングハウスなど伝統的な住居にひと夜を過ごす。焚き木を囲んで長老の語る神話・伝説に耳を傾ける。一緒に馬に乗ったり、カヌーを漕いだり、犬ぞりを使ったりして、彼らが大昔から暮らしてきた大地を探索する。そんな、先住民の世界にどっぷり浸かるディープな体験は、生涯の想い出になるだろう。
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モカシン、スノーシュー、樺皮細工、ドリームキャッチャー、木彫りの仮面、ビーズ細工を施したレザーバッグetc. カナダ先住民の工芸家が作る伝統的なクラフトの数々。先住民のアート&クラフト・ショップを訪ね、カナダならではのユニークな工芸品をゲットしよう。
1960年代以降、伝統的な自然観・価値観を現代アートとして表現する先住民アーティストが次々に誕生し、今日に至っている。バンクーバー国際空港の至る所に先住民作家の作品が展示されている状況は、先住民現代アートがカナダを象徴する存在になっていることを端的に表している。首都オタワのカナダ国立美術館でも先住民アートは大々的に展示され、ウィニペグではイヌイット・アート専門の大きな美術館「カウマヨック(Qaumajuq)」もオープンした。美術館などで、先住民の現代アートに触れてみよう。
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大都会の郊外に開設された先住民カジノに行けば、先住民のアートや工芸品に触れることもでき、「先住民カジノで楽しむ」というちょっと変わった体験ができると同時に、地域の先住民の経済を潤すことができる。
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大都会でもできる最も手軽な先住民体験は、博物館を訪ねることだ。歴史博物館や民族学博物館では、先住民の歴史と文化を、遺物を通して具体的に学ぶことができる。
展示物の紹介を先住民自身が担当する施設も多い。そうした施設では、「モノ」だけではなく、当事者の口から彼らの歴史・文化、そして現状を聴くこともできるのだ。
北米インディアンの歌と踊りのお祭り「パウワウ」。アメリカから伝わり、今ではカナダでも多くの居留地や周辺の町などで催されている。メインイベントは踊りのコンテスト。いくつかの部門があり、踊りの技を競う。コミュニティごとに毎年開催の時期が決まっているが6~9月の週末に開かれるケースが多い。観光客も歓迎のオープンなお祭りで、ハレの日の先住民に出会うにはもってこいのイベント。
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町によっては、パウワウとは別に、先住民関連のイベントが開かれる。例えばモントリオールでは毎年7月末~8月上旬頃、先住民族フェスティバルが10日間に渡って開かれ、先住民音楽のコンサート、映像作品コンテスト、先住民の踊りの大会、展示会、セミナーなどが催される。