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ビーバーがいっぱい

ビーバーがいっぱい

カナダにはいたるところにビーバーがいます。もちろん、本物のビーバーに出会う機会はそうありませんが、お土産やぬいぐるみとして頻繁にビーバーを見ることができます。カナダ人が大好きなあのスイーツの名前も「ビーバーテイルズ」でした。5セント硬貨にもビーバーがデザインされています。カナダを代表するアパレルブランド「ROOTS(ルーツ)」や国立公園を管理する政府機関「パークス・カナダ」のマークもみんなビーバーです。

フランス人、イギリス人が大西洋を渡って北米大陸にやって来たのは、このビーバーの毛皮が目的でした。外側の固い毛をかき分けると内側にフワフワの柔らかい内毛があります。この内毛だけを集めて濡らしたり熱を加えたりすると毛と毛がからまりあう「縮絨(しゅくじゅう)」ということが起こり、ビーバーの毛のフェルト生地ができあがります。ビーバーフェルトは当時、ヨーロッパの上流階級で大流行したビーバーハットの素材となりました。王侯貴族、軍人、聖職者。身分ある人の帽子はみんなビーバーハット。イギリス紳士の山高帽もナポレオン・ボナパルトの二角帽もみんなビーバーフェルト製のビーバーハットでした。ちなみにナポレオンは最高権力者の地位にあった時期、職人に120個ものビーバーハットを作らせたといいます。

ただし、ヨーロッパ人はビーバーを捕まえる方法を知らないどころか、カナダの厳しい冬を越す術すら知らなかったのです。このためヨーロッパ人は、物々交換の「交易」という手法がとりました。先住民と友好な関係を保ち、白人男性と先住民女性による温かな家庭もたくさん築かれました。先住民が罠でビーバーを捕らえ、なめし皮にしてヨーロッパ人の交易所に持ち込みます。対価として受け取るのはヤカンやナイフ、銃、ビーズなど。フランスがケベック・シティに建設した木造の砦はこの毛皮の交易所でした。

首都オタワの語源は、先住民の言葉で「交易」を意味する「オタ・ウイ・ウイ」。オタワとモントリオールを結ぶオタワ川は、内陸部から毛皮を運ぶ主要ルートでもありました。毛皮にされたビーバーには迷惑このうえない話ですが、ビーバーの存在がヨーロッパ人と先住民の「TSUNAGARI」を生みました。そして先住民の知恵として、川や湖を進む白樺のカヌーや雪の上を歩くスノーシュー、そして貴重な甘さである砂糖カエデの甘い樹液の存在などがヨーロッパ人へと伝えられていったのです。