ニューファンドランド島は、太古の地球を体感できる場所。氷河が大地を削り取った巨大なフィヨルド、地上に露出したマントルなど創成期の地球の姿を目の当たりにします。沖にはゆっくり氷山が流れ、海鳥パフィンが舞い、遠くでクジラが潮を吹き上げる。そんな自然に囲まれた街や漁村を歩くと、地元の人々の誇りと土地への愛着が感じられます。その礎となるのが、かつて冒険者たちによって「新しく見つけられた土地」に息づく、タラの漁場を舞台にした壮大な物語とそこから生まれた独特の伝統と文化。カナダ最果ての地で、あなたの冒険心を解き放ちましょう。
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アトランティック・カナダ ユネスコ回廊
アトランティック・カナダの魅力を象徴するのが、ユネスコ回廊。
カナダの大西洋岸3州(ニュー・ブランズウィック州、ノバ・スコシア州、ニューファンドランド&ラブラドール州)に、ユネスコ(UNESCO)が指定する13の史跡(7つの世界遺産、3つの世界ジオパーク、3つのエコパーク)が点在します。 独自の景観、豊かな文化的歴史と多様な見どころのネットワークを形成しています。
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セント・ジョンズ
St. John's
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プラセンティア
Placentia
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ボナビスタ半島
Bonavista Peninsula
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トウィリンゲート
Twillingate
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グロスモーン国立公園
Gros Morne National Park
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ランス・オ・メドー国定史跡
L'Anse aux Meadows National Historic Site
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セント・ジョンズ
St. John's
カナダ最東端の カラフルな都市を歩く
ニューファンドランド島東部のアバロン半島に位置するセント・ジョンズは、北米で最も古い歴史をもつ都市のひとつ。急な斜面にお菓子のようにカラフルな家が建ち並ぶ街を歩くと、最東端の都市ならではの歴史とともに、港町で生きる人々の活気を感じることが出来ます。ニューファンドランド&ラブラドール州で新しい発見と出会う期待感に胸が躍る瞬間です。
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ザ・ルームズ
THE ROOMS
セント・ジョンズの街中でひときわ存在感を放つ、巨大な家の形をした建物があります。これは「ザ・ルームズ」という、2005年にオープンした総合型の公共文化施設。近代的でスタイリッシュな館内には、芸品、美術品、記録文書など、ニューファンドランド&ラブラドール州最大のコレクションを所蔵しており、多彩な歴史と豊かな物語を、五感に訴える体験として私たちに伝えています。
最上階の「ザ・ルームズ・カフェ」は、若者に人気のスポット。セント・ジョンズの街並みを一望しながら、これから始まる冒険に胸を躍らせて、地元の素材を使った食事を楽しみましょう。
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ジェリービーンズ・タウン
Jelly beans town
港町セント・ジョンズを象徴する風景のひとつ。まるで色とりどりのジェリービーン(お菓子)のような街並みは「ジェリービーンズ・タウン」とも呼ばれています。世界一霧の深い街としてギネス登録されている港町セント・ジョンズでは、このカラフルな色が公開から戻る漁師たちの目印にもなったと言われています。そんな物語も想像しながら、路地の周辺に何気なくあふれるフォトスポットを見つけながら、ちょっと急な坂道を登ってみましょう。
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シグナル・ヒル国定史跡
Signal Hill National Historic Site
小高い丘の上に位置するセント・ジョンズのランドマーク的な存在。1901年、この場所でグリエルモ・マルコーニが史上初となる大西洋横断無線信号の受信に成功しました。ジョン・カボットが上陸してから400周年を記念し建設されたカボット・タワーは、さまざまな歴史に彩られた街のシンボル。夏の間は「シグナル・ヒル・タトゥー」と呼ばれる軍事パフォーマンスが行われます。
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スピア岬灯台国定史跡
Cape Spear Lighthouse National Historic Site
北米最東端のスピア岬灯台は、北米で最初に日の出が見られる場所として人気を集める観光スポット。小高い丘の上に立つ木造の灯台は、1836年に作られたニューファンドランドで最古の灯台で、1995年まで安全な航海を守り続けていました。歴史を伝える貴重な遺産として、現在は国定史跡に指定されています。広大な海を眺めながら遠くヨーロッパからやってきた冒険者たちの航海を想像してみましょう。
スクリーチ・イン儀式
The "Screech In" Ceremony
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タラとキスするという、何とも不思議なニューファンドランドの“ 儀式” スクリーチ・イン。まずは訛りのきつい島独特の英語のジョークでまくしたてられたあと、小さく切ったハムのようなものを食べたり、ハッカの飴を舐めさせられたりします。最後はラム酒をショットで一気飲み。このルーティーンが済むといよいよ冷凍タラの登場です。しっかりキスして島の仲間と認められたら、証明書を発行してもらえます。
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カラフルな街並みで感じた港町の活気、そしてシグナル・ヒル国定史跡やスピア岬灯台国定史跡から大西洋を見た時にわいてきた入植の歴史への好奇心。このユニークな物語に溢れた最東端の島で明日から冒険の旅が始まります。
ここもチェック!
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キディ・ビディ・ビレッジ
Quidi Vidi Village
キディ・ビディ港の入り江のほとりに昔ながらの漁村の雰囲気を残す集落。18世紀に建てられたかつてのアイルランド移民の住宅「マラード・コテージ」は、北米で最も古い木造建築のひとつです。現在は、地元料理を味わえるレストランとして開業中。キディ・ビディ・ブリュワリーは、地ビールを楽しめる人気スポットとして賑わい、氷山のメッカとして知られるニューファンドランドで絶対に外せない氷山の水を使った「アイスバーグビール」も味わえます。
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プラセンティア
Placentia
ニューファンドランドで タラ漁の歴史を学ぶ
セント・ジョンズのカラフルな街で体験したタラとキスをする伝統文化「スクリーチ・イン」と街中で味わった絶品フィッシュ・アンド・チップスとタラ料理。タラはニューファンドランドの歴史において特別な存在です。タラ漁の歴史を知ることは、ニューファンドランドの奥深さを知るために不可欠です。アバロン半島のプラセンティアで、かつてイギリス軍とフランス軍が繰り広げたタラの漁場を巡る歴史を辿ります。
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キャッスル・ヒル国定史跡
Castle Hill National Historic Site
ニューファンドランド島は、漁業の島として知られ、島周辺の豊かな海の幸を求め、大航海時代のずっと前からスペイン、ポルトガル、イギリス、フランスなど各国の漁船がニューファンドランド沖に押し寄せました。その歴史を伝えるのが、かつてイギリス軍とフランス軍が、タラの漁場の支配権を争い戦闘を繰り広げたプラセンティア。この街を見渡す位置にある砦、キャッスル・ヒル国定史跡では、北米大陸の命運を決定づけた歴史の一節を目にすることができます。ビジターセンターには、当時の貴重な資料やジオラマが充実しており、初心者でも好奇心に駆り立てられます。砦の砲台から大砲とマスケット銃が火を噴く光景を想像しながら、タラ漁の歴史に没入してみましょう。
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ウィットレス・ベイ生態保護区
Witless Bay Ecological Reserve
海へ近づくと遠くから無数の海鳥の鳴き声が聞こえてきます。さらに近づくとまるで岩に真っ白い紙吹雪がかかったような風景が見えてきます。ウィットレス・ベイ生態保護区には、ガル島、グリーン島、グレート島、ピーピー島の4つの島があります。この小さな島々からなるこの保護区は、夏には、何十万羽もの海鳥がこの島で巣作りや子育てをします。中でも世界で2番目に大きなウミツバメのコロニーがあり、62万羽以上がここに巣を作ります。さらに、ウミネコやウミガラスも数千羽単位で確認されています。圧巻の自然の中で、生態保護の尊さを感じましょう。
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ミステイクン・ポイント
Mistaken Point
ニューファンドランド島アバロン半島東南端に位置するユネスコ世界遺産に登録されている「ミステイクン・ポイント」へ。ここは全長17キロの断崖の生態系保護区。約6億年前に棲息していた地球最初期の多細胞生物群であるエディアカラ生物群は骨格や殻を持っていない生物であるために化石として残りづらいのですが、世界最古の豊富で多様な大型化石の集合体がきわめて良い状態で保存されています。まさに地球上の生命の進化の分岐点を示している場所で、世界で最も重要な化石地域の一つとなっています。
ニューファンドランドでタラ漁の歴史に触れ、そこに紐づく食文化や人々の暮らしを知ることで、この広大な大地との繋がりをもっと知りたくなります。そこにあるダイナミック絶景やキュートな野生動物を求めて、明日はボナビスタ半島を目指します。
ここもチェック!
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フェリーランド灯台
Ferryland Lighthouse
美しい灯台の下で大西洋を眺めながら、手作りサンドイッチを味わう。セント・ジョンズから車で約1時間の場所に位置するフェリーランドは、そんな体験が簡単にできる場所です。特別な準備をしなくても、灯台内でピクニックランチを注文して、キルトのピクニックマットを広げて待っていると、サンドイッチ、ドリンク、デザートのセットが運ばれてきます。あとは思う存分、素晴らしい時間を満喫しましょう。
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ボナビスタ半島
Bonavista Peninsula
5億年かけて作られた 世界ジオパークへ
ユネスコ回廊の3つの「ユネスコ世界ジオパーク」のひとつがニューファンドランド&ラブラドール州にあります。それは、ボナビスタ半島にある「ディスカバリー世界ジオパーク」です。10のサイトには、5億6千万年前の化石からダイナミックな海食柱、繊細な曲線を描く海食洞まで、地質学的な歴史を知ることが出来ます。さらにキュートなパフィンとの出会いも。
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トリニティ
Trinity
始めにボナビスタ半島の小さな港町トリニティへ。19世紀から保存されている家屋、博物館、美術館、その他の歴史的建造物がこの地域を埋め尽くしています。この町を歩くと、まるで歴史を歩いているような気分になります。鍛冶屋の仕事ぶりを見学し、樽製造について学ぶために樽製造所を訪れてみてください。
ところで「銀河鉄道の夜」などで知られる宮澤賢治は、「ビジテリアン大祭」という作品で、見たこともないはずのニューファンドランド、そしてトリニティを物語の舞台に選んでいます。実はニューファンドランド沖ではかつて、豪華客船タイタニック号が氷山に衝突して沈没するという事故が起きており、賢治も「銀河鉄道の夜」の中で、この事故を想起させるエピソードを盛り込んでいるのです。世界的に報道されたこの事故を知り、賢治は見知らぬニューファンドランド、そして「三位一体」の意味を持つトリニティ(Trinity)という町の名前に想像力をかきたてられたのかもしれません。
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エリストン
Elliston
ディスカバリー世界ジオパーク内の10のジオサイトのひとつ、エリストンへ。この町には、風光明媚な入り江の美しい砂浜があるだけでなく、岬にはニューファンドランド&ラブラドール州の州鳥として知られるカラフルなパフィン(ニシツノメドリ)が数百羽生息しています。夏の間、子育てのために無数のパフィンがやってきて、まったく警戒することなくあたりをトコトコ歩いているため、愛くるしいパフィンを至近距離からカメラにおさめられます。あまりにもキュートな姿に思わず微笑んでしまうことでしょう。
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ダンジョン州立公園
Dungeon Provincial Park
ボナビスタ半島の北部に点在するドラマチックな自然の景観。岬の海岸線には、大西洋の強力な浸食波作用をよく伝えるダンジョン州立公園があります。ここもディスカバリー世界ジオパークのジオサイトのひとつ。ダンジョンは絶え間ない浸食によって、このハート形のユニークな景観が作られました。岩を削り続ける波の絶え間ない音を聞きながら、悠久の自然の力を感じてみましょう。
ダンジョンの未来がどのようなものか見てみたいなら、州立公園の近くのスピラーズ・コーブにある「チムニー(The Chimney)」まで足を運んでみましょう。文字通り、煙突のような形をした海食柱は、浸食の凄さを物語っています。
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ジョン・カボット像
John Cabot Statue
ボナビスタ半島では太古の自然だけでなく、最東端の地ならではの入植の歴史を感じる場所もあります。1497年、イタリアの探検家ジョン・カボット(ジョバンニ・カボット)が初めて北米に目を向けたとき、彼が最初に発した言葉は 「O buono vista!(幸せな光景)」 でした。ボナビスタの魅力に触れた人なら、その言葉が、カボットが上陸した歴史的な場所であるボナビスタの町にぴったりであると感じるはずです。その後、ボナビスタは何世紀もの時を経て、過去の物語を語り、未来の物語を記しています。この情緒あふれる町を歩きながら、歴史の経過を想像してみましょう。
ボナビスタ半島にある「ディスカバリー世界ジオパーク」で自ら自然に触れることで、「地質遺産が自然環境や地域の文化への理解を深め、自然と人間との共生及び持続可能な開発を実現する」というユネスコの目的を体感することができます。キュートなパフィンの表情を思い出しながら、幸せな気分で明日の冒険へ備えます。
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トウィリンゲート
Twillingate
アイスバーグ・アレーで 出会う氷山
この日はニューファンドランド島北東の町、トウィリンゲートへ。ここはニューファンドランド&ラブラドール州の多くの沿岸地域が誇る、素晴らしい海岸線、歴史的な美しい町並み、緑豊かな田舎道など、あらゆるものを体現しています。トウィリンゲートは、グリーンランドから続く広大な海の回廊「アイスバーグ・アレー」の通過地点のひとつです。奇跡のような氷山との出会いが待っています。
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氷山ウォッチング
Iceberg Watching
氷山の首都として知られるトウィリンゲートは、グリーンランドで数万年前に北極に降り積もった雪が凍って氷河となり、そこから崩れ落ちた巨大な氷のかたまりが「氷山」となって海に流れ出す、「アイスバーグ・アレー」の通過地点のひとつ。この自然界の巨人の姿を眺めるのに最高の場所のひとつです。氷山は、その大きさにもかかわらず、1日に平均17キロ(約10マイル)移動します。
氷山ウォッチングのベストシーズンは毎年5月中旬から7月中旬。トウィリンゲートでは、氷山ウォッチングのボートツアーがあり、この奇跡のような自然の構造物に近づくことができます。その海上に浮かぶ神秘的な姿は実際にその目で見た人にしかわからない特別なものなのです。
そしてせっかくならグラスを持参して、氷山のかけらを入れてみましょう。海水が凍ってできる「流氷」とは違い、「氷山」の氷は溶かせば真水になります。グラスの中で氷が解けるとシュワシュワという音が聞こえてきます。この音は、氷山に閉じ込められた空気の泡が逃げるときに発生するものです。他ではできない体験です。
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ホエール・ウォッチング
Whale Watching
ニューファンドランド&ラブラドール州は、世界有数のホエールウォッチングスポット。
毎年、5月中旬から9月にかけて、15メートル近くにまで成長する大型クジラのザトウクジラが、沖合に生息するシシャモやオキアミ、イカを目当てに毎年、このエリアに戻ってきます。このほかシャチやゴンドウクジラなど21種ものクジラやイルカが集まります。クジラを追って船に乗り、巨大な尾ビレが海面に躍り出たときに胸が高鳴る感動を体験してみましょう。
トゥイリンゲートにはツアーオペレーターがクジラや氷山、その他の海洋生物を間近に見られるホエール・ウォッチングツアーを毎日催行しています。
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木造船博物館
Wooden Boat Museum
トウィリンゲートの木造船建造の歴史を保存し、その技術を伝承することを目的としています。昔ながらの漁師の町らしく、船づくりが盛んだった港としての歴史を持ちます。ここで製造された大型の船は、タラ漁のためニューファンドランド北部で使われたり、西インド諸島に干塩ダラを運ぶのに使われたりしてきました。この港で作られた最も小型の船はパント(Punt)と呼ばれる。小回りが効き港や入り江などで人や物を運ぶのに重宝されました。ニューファンドランドには「A pig, a punt and a potato patch」という言葉があります。この島で生きていくのに欠かせないものとして、豚やジャガイモ畑とともにパントが挙げられています。日々の食べ物と同じくらい身近な存在である船。漁師の町らしい表現です。
まるで生命を宿っているかのような巨大な氷山との出会いは、自分が抱いていた自然のスケール感も時間軸も全く新しいものへと変えてくれました。いよいよ明日は最終日。ユネスコ回廊の中でも圧倒的なスケールと人気を誇る、ユネスコ世界遺産「グロスモーン国立公園」を目指します。
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グロスモーン国立公園
Gros Morne National Park
氷河が創った世界で 地球の鼓動を感じる
いよいよニューファンドランド島の西岸に位置するグロスモーン国立公園まで移動します。ここは数億年の地殻変動の様子を伝える自然公園。グロスモーンとは「偉大なる絶壁」の意味しており、氷河がつくり上げた自然の造形美の中でハイキングをしたり、クルーズ船で進めば、太古の地球の歴史に圧倒されます。ここには「絶景」というひと言では表せない、壮大な体験が待っています。
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世界遺産「グロスモーン国立公園」の大地を歩く
観光船が進む湖は、およそ1万5千年かけて氷河が大地を削り取った痕跡。左右にそびえ立つ断崖は高いところで700メートル以上あります。湖底までの深さを合わせると、氷河は900メートル近くも大地を抉りながら、ゆっくりと海に滑り落ちていったことになります。それはもう驚きと言うしかありません。
ニューファンドランド島の西岸に位置するユネスコ世界自然遺産「グロスモーン国立公園」。中でも氷河の壮大な物語を感じることができる、ウェスタンブルックポンドの観光船ツアーは絶対に外せない体験。かつてこの世界遺産をつくりあげた巨大な氷は、運んできた土砂を海底に盛り上げて海の中に「丘」をつくりました。その「丘」の住みやすさが魚を呼び寄せ、魚が人を呼び寄せました。豊かな海の幸のおかげで、人々はここにウッディポイントをはじめ、素敵な集落をつくることになったのです。この自然とコミュニティとの繋がりを知ることで、グロスモーン国立公園への畏敬の念は大きくなります。
一方、赤茶けた巨大な台地「テーブルランド」は、地球の「核」近くにあるはずのマントル。それがどうして地表に飛び出しているのか。プレートテクトニクスによる大陸移動が地上にマントルを現出させたのだと分かるまで、「テーブルランド」は地質学者たちを悩ませ続けてきました。この地質学的な重要性もまた、1987年の世界遺産登録の理由となりました。氷河の造形物とマントルの台地に出会ったあとは、その足でウッディポイントの町を巡りましょう。地球の悠久の営みと、われわれ人間の小さな、小さな営みがシンクロしているように思えてきます。この場に立てている奇跡に、思わずため息ともつかない声が漏れてしまうことでしょう。
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ウッディポイント
Woody Point
天然の良港として海産物の取引や海軍の拠点として栄えてきたウッディポイントは今、画家や音楽家、作家などが集まるアーティスティックな町となっています。昔の面影を残す建物はサマーハウスなどとして人気を博し、かつての教会も音楽などを楽しむ場として生まれ変わりました。ラグフッキングを扱うおしゃれなクラフトショップなども並んでいます。不思議なことに、グロスモーン国立公園の地球の悠久の営みと、私たち人間の小さな、小さな営みがシンクロしているように思えてきます。この場に立てている奇跡に、思わずため息ともつかない声が漏れてしまいます。
キッチンパーティー
Kitchen Party
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ニューファンドランドのコミュニティに溶け込む体験。それが一緒に飲んで騒いで踊るのが大好き。キッチンパーティーです。楽器が演奏できない人は、2本のスプーンを重ねてカスタネットのように鳴らしたり、棒やモップにビール瓶の王冠などを打ち付けた「アグリースティック」でリズムをとったり。独特のステップで踊り、歌い、一息ついてグラスを重ね、さらにワイワイ、ガヤガヤ。楽しい時だけではなく、悲しいことがあった時も、この島ではみんながキッチンに集まって乗り越えてきました。ここでは、いつもなら抱いている「照れ」を捨てて、思いっきり楽しみましょう。
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ニューファンドランド島の「偉大なる絶壁」で出会った、1万5千年かけて氷河が大地を削り取って作られたフィヨルド、そして数億年前の地殻変動でマントルが地上に押し出されたテーブルランド。グロスモーン国立公園は太古の地球の歴史そのものであり、地球の鼓動を感じながら心が解放され、前へ進む力が沸いてきます。
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ランス・オ・メドー国定史跡
L'Anse aux Meadows National Historic Site
大西洋を渡った 北欧バイキングの集落へ
最終日にやってきたのはニューファンドランド島最北端にある、1978年に最初の世界遺産のひとつとして登録されたランス・オ・メドー国定史跡。1000年以上も昔、グリーンランドから航海してきた北欧バイキングが上陸し、小さな集落を築いた場所です。北米最果ての地で、カナダの本当の歴史の始まりを知り、壮大な冒険の痕跡を辿ります。
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世界遺産「ランス・オ・メドー国定史跡」で歴史を辿る
冒険の果てにある新しい発見。その歴史が形となって残っているのがニューファンドランド島最北端にある、ランス・オ・メドー国定史跡。北欧の物語「サガ」に描かれているバイキングが目指した「ヴィンランド」は、伝説に過ぎないと考えられていました。しかし、1960年にノルウェーの探検家のヘルゲ・イングスタッドと妻で考古学者のアン・イングスタッドが小さなマントピンを発見したことですべてが変わりました。この発見をきっかけにした、その後の調査で船作りに使用された製材所や溶鉱炉の跡、多くの生活道具が発見。ニューファンドランド&ラブラドール(彼らが「ヴィンランド」と呼んだ場所)に入植し、定住したことが証明されたのです。そして、何とそれはコロンブスが新大陸を発見するより500年以上も前のことでした。
現在、遺跡の近くには、当時の住居や船などを復元したバイキング村があり、バイキングの生活の様子を知ることができます。再現された野営地では、昔ながらの鍛冶や機織りを体験したり、バイキングの歴史を生き生きと語る案内人と話をすることも。まるでタイムスリップした気分を味わいながら最果ての地に立つと、バイキングの壮大な冒険と、その旅の果てで発見した「新しく見出された土地」の尊さを感じずにはいられません。
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カラフルな街並みから始まったニューファンドランド島の旅では、入植の歴史を学び、太古の地球を体感し、コミュニティに触れて、冒険心を刺激することができます。キッチンパーティーでニューファンドランドの人々と笑顔で飲んで、踊って、歌ったときに、走馬灯のようによみがえるユニークな時間。一生忘れることが出来ない思い出とともに、明日から始まる新しい冒険へ胸が高鳴ります。カナダ最東端の地、ニューファンドランド島。ここは全ての旅人にとって、そんな新しいチャプターを開くきっかけになる場所です。
ここもチェック!
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レッドベイのバスク人捕鯨 基地
Red Bay Basque Whaling Station
もしも日程に余裕があれば、フェリーでラブラドール地方へ渡り、世界遺産「レッドベイのバスク人捕鯨基地」へ。ニューファンドランド島のセント・バーブからケベック州のブラン・サブロンまで毎日運航しているフェリー(所要時間1.5時間)を利用して、東に車で1時間ほどでアクセスできます。16世紀にスペイン少数民族のバスク人によって捕鯨活動が行われていた場所。この地には、製油装置や桶といった遺物や、波止場や墓地などの遺構が残されています。また、陸上の遺跡のほか、海底には当時の捕鯨方法や造船技術を伝える沈没船があり、水中文化遺産として歴史的に重要な場所となっています。
その他の物語
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ノバ・スコシア州/ニュー・ブランズウィック州
大西洋の潮風に誘われて
心が繋がるユネスコ回廊を辿る
カナダ東部の大西洋に面したノバ・スコシア州とニュー・ブランズウィック州。港町が伝える遠洋航海のロマンと、小さなコミュニティに息づく入植者たちの想い。絶景の中にそれぞれの歴史と物語があり、一体感に溢れています。 カナダ入植の歴史に触れて、世界一の干満差を誇る湾で自然の驚異を体感したら、地元の絶品シーフードに舌鼓を打つ。数々の感動がひとつの物語となり、心が繋がるユネスコ回廊を辿ってみましょう。
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プリンス・エドワード島州
赤毛のアンの島で触れるサステナブルで豊かな暮らし
カナダの大西洋沿岸、セント・ローレンス湾に浮かぶプリンス・エドワード島。名作「赤毛のアン」の舞台となった島として有名ですが、物語で描かれる牧歌的な農村の生活は、今でも息づき、旅人にも真の豊かさとは何かを気づかせてくれます。美しい風景と地産地消の美食を堪能しながら、サステナブルで豊かな暮らしを体験してみましょう。
ニューファンドランド島は、太古の地球を体感できる場所。氷河が大地を削り取った巨大なフィヨルド、地上に露出したマントルなど創成期の地球の姿を目の当たりにします。沖にはゆっくり氷山が流れ、海鳥パフィンが舞い、遠くでクジラが潮を吹き上げる。そんな自然に囲まれた街や漁村を歩くと、地元の人々の誇りと土地への愛着が感じられます。その礎となるのが、かつて冒険者たちによって「新しく見つけられた土地」に息づく、タラの漁場を舞台にした壮大な物語とそこから生まれた独特の伝統と文化。カナダ最果ての地で、あなたの冒険心を解き放ちましょう。
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アトランティック・カナダ ユネスコ回廊
アトランティック・カナダの魅力を象徴するのが、ユネスコ回廊。
カナダの大西洋岸3州(ニュー・ブランズウィック州、ノバ・スコシア州、ニューファンドランド&ラブラドール州)に、ユネスコ(UNESCO)が指定する13の史跡(7つの世界遺産、3つの世界ジオパーク、3つのエコパーク)が点在します。 独自の景観、豊かな文化的歴史と多様な見どころのネットワークを形成しています。
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セント・ジョンズ
St. John's
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プラセンティア
Placentia
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ボナビスタ半島
Bonavista Peninsula
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トウィリンゲート
Twillingate
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グロスモーン国立公園
Gros Morne National Park
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ランス・オ・メドー国定史跡
L'Anse aux Meadows National Historic Site
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セント・ジョンズ
St. John's
カナダ最東端の カラフルな都市を歩く
ニューファンドランド島東部のアバロン半島に位置するセント・ジョンズは、北米で最も古い歴史をもつ都市のひとつ。急な斜面にお菓子のようにカラフルな家が建ち並ぶ街を歩くと、最東端の都市ならではの歴史とともに、港町で生きる人々の活気を感じることが出来ます。ニューファンドランド&ラブラドール州で新しい発見と出会う期待感に胸が躍る瞬間です。
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ザ・ルームズ
THE ROOMS
セント・ジョンズの街中でひときわ存在感を放つ、巨大な家の形をした建物があります。これは「ザ・ルームズ」という、2005年にオープンした総合型の公共文化施設。近代的でスタイリッシュな館内には、芸品、美術品、記録文書など、ニューファンドランド&ラブラドール州最大のコレクションを所蔵しており、多彩な歴史と豊かな物語を、五感に訴える体験として私たちに伝えています。
最上階の「ザ・ルームズ・カフェ」は、若者に人気のスポット。セント・ジョンズの街並みを一望しながら、これから始まる冒険に胸を躍らせて、地元の素材を使った食事を楽しみましょう。
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ジェリービーンズ・タウン
Jelly beans town
港町セント・ジョンズを象徴する風景のひとつ。まるで色とりどりのジェリービーン(お菓子)のような街並みは「ジェリービーンズ・タウン」とも呼ばれています。世界一霧の深い街としてギネス登録されている港町セント・ジョンズでは、このカラフルな色が公開から戻る漁師たちの目印にもなったと言われています。そんな物語も想像しながら、路地の周辺に何気なくあふれるフォトスポットを見つけながら、ちょっと急な坂道を登ってみましょう。
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シグナル・ヒル国定史跡
Signal Hill National Historic Site
小高い丘の上に位置するセント・ジョンズのランドマーク的な存在。1901年、この場所でグリエルモ・マルコーニが史上初となる大西洋横断無線信号の受信に成功しました。ジョン・カボットが上陸してから400周年を記念し建設されたカボット・タワーは、さまざまな歴史に彩られた街のシンボル。夏の間は「シグナル・ヒル・タトゥー」と呼ばれる軍事パフォーマンスが行われます。
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スピア岬灯台国定史跡
Cape Spear Lighthouse National Historic Site
北米最東端のスピア岬灯台は、北米で最初に日の出が見られる場所として人気を集める観光スポット。小高い丘の上に立つ木造の灯台は、1836年に作られたニューファンドランドで最古の灯台で、1995年まで安全な航海を守り続けていました。歴史を伝える貴重な遺産として、現在は国定史跡に指定されています。広大な海を眺めながら遠くヨーロッパからやってきた冒険者たちの航海を想像してみましょう。
スクリーチ・イン儀式
The "Screech In" Ceremony
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タラとキスするという、何とも不思議なニューファンドランドの“ 儀式” スクリーチ・イン。まずは訛りのきつい島独特の英語のジョークでまくしたてられたあと、小さく切ったハムのようなものを食べたり、ハッカの飴を舐めさせられたりします。最後はラム酒をショットで一気飲み。このルーティーンが済むといよいよ冷凍タラの登場です。しっかりキスして島の仲間と認められたら、証明書を発行してもらえます。
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カラフルな街並みで感じた港町の活気、そしてシグナル・ヒル国定史跡やスピア岬灯台国定史跡から大西洋を見た時にわいてきた入植の歴史への好奇心。このユニークな物語に溢れた最東端の島で明日から冒険の旅が始まります。
ここもチェック!
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キディ・ビディ・ビレッジ
Quidi Vidi Village
キディ・ビディ港の入り江のほとりに昔ながらの漁村の雰囲気を残す集落。18世紀に建てられたかつてのアイルランド移民の住宅「マラード・コテージ」は、北米で最も古い木造建築のひとつです。現在は、地元料理を味わえるレストランとして開業中。キディ・ビディ・ブリュワリーは、地ビールを楽しめる人気スポットとして賑わい、氷山のメッカとして知られるニューファンドランドで絶対に外せない氷山の水を使った「アイスバーグビール」も味わえます。
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プラセンティア
Placentia
ニューファンドランドで タラ漁の歴史を学ぶ
セント・ジョンズのカラフルな街で体験したタラとキスをする伝統文化「スクリーチ・イン」と街中で味わった絶品フィッシュ・アンド・チップスとタラ料理。タラはニューファンドランドの歴史において特別な存在です。タラ漁の歴史を知ることは、ニューファンドランドの奥深さを知るために不可欠です。アバロン半島のプラセンティアで、かつてイギリス軍とフランス軍が繰り広げたタラの漁場を巡る歴史を辿ります。
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キャッスル・ヒル国定史跡
Castle Hill National Historic Site
ニューファンドランド島は、漁業の島として知られ、島周辺の豊かな海の幸を求め、大航海時代のずっと前からスペイン、ポルトガル、イギリス、フランスなど各国の漁船がニューファンドランド沖に押し寄せました。その歴史を伝えるのが、かつてイギリス軍とフランス軍が、タラの漁場の支配権を争い戦闘を繰り広げたプラセンティア。この街を見渡す位置にある砦、キャッスル・ヒル国定史跡では、北米大陸の命運を決定づけた歴史の一節を目にすることができます。ビジターセンターには、当時の貴重な資料やジオラマが充実しており、初心者でも好奇心に駆り立てられます。砦の砲台から大砲とマスケット銃が火を噴く光景を想像しながら、タラ漁の歴史に没入してみましょう。
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ウィットレス・ベイ生態保護区
Witless Bay Ecological Reserve
海へ近づくと遠くから無数の海鳥の鳴き声が聞こえてきます。さらに近づくとまるで岩に真っ白い紙吹雪がかかったような風景が見えてきます。ウィットレス・ベイ生態保護区には、ガル島、グリーン島、グレート島、ピーピー島の4つの島があります。この小さな島々からなるこの保護区は、夏には、何十万羽もの海鳥がこの島で巣作りや子育てをします。中でも世界で2番目に大きなウミツバメのコロニーがあり、62万羽以上がここに巣を作ります。さらに、ウミネコやウミガラスも数千羽単位で確認されています。圧巻の自然の中で、生態保護の尊さを感じましょう。
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ミステイクン・ポイント
Mistaken Point
ニューファンドランド島アバロン半島東南端に位置するユネスコ世界遺産に登録されている「ミステイクン・ポイント」へ。ここは全長17キロの断崖の生態系保護区。約6億年前に棲息していた地球最初期の多細胞生物群であるエディアカラ生物群は骨格や殻を持っていない生物であるために化石として残りづらいのですが、世界最古の豊富で多様な大型化石の集合体がきわめて良い状態で保存されています。まさに地球上の生命の進化の分岐点を示している場所で、世界で最も重要な化石地域の一つとなっています。
ニューファンドランドでタラ漁の歴史に触れ、そこに紐づく食文化や人々の暮らしを知ることで、この広大な大地との繋がりをもっと知りたくなります。そこにあるダイナミック絶景やキュートな野生動物を求めて、明日はボナビスタ半島を目指します。
ここもチェック!
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フェリーランド灯台
Ferryland Lighthouse
美しい灯台の下で大西洋を眺めながら、手作りサンドイッチを味わう。セント・ジョンズから車で約1時間の場所に位置するフェリーランドは、そんな体験が簡単にできる場所です。特別な準備をしなくても、灯台内でピクニックランチを注文して、キルトのピクニックマットを広げて待っていると、サンドイッチ、ドリンク、デザートのセットが運ばれてきます。あとは思う存分、素晴らしい時間を満喫しましょう。
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ボナビスタ半島
Bonavista Peninsula
5億年かけて作られた 世界ジオパークへ
ユネスコ回廊の3つの「ユネスコ世界ジオパーク」のひとつがニューファンドランド&ラブラドール州にあります。それは、ボナビスタ半島にある「ディスカバリー世界ジオパーク」です。10のサイトには、5億6千万年前の化石からダイナミックな海食柱、繊細な曲線を描く海食洞まで、地質学的な歴史を知ることが出来ます。さらにキュートなパフィンとの出会いも。
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トリニティ
Trinity
始めにボナビスタ半島の小さな港町トリニティへ。19世紀から保存されている家屋、博物館、美術館、その他の歴史的建造物がこの地域を埋め尽くしています。この町を歩くと、まるで歴史を歩いているような気分になります。鍛冶屋の仕事ぶりを見学し、樽製造について学ぶために樽製造所を訪れてみてください。
ところで「銀河鉄道の夜」などで知られる宮澤賢治は、「ビジテリアン大祭」という作品で、見たこともないはずのニューファンドランド、そしてトリニティを物語の舞台に選んでいます。実はニューファンドランド沖ではかつて、豪華客船タイタニック号が氷山に衝突して沈没するという事故が起きており、賢治も「銀河鉄道の夜」の中で、この事故を想起させるエピソードを盛り込んでいるのです。世界的に報道されたこの事故を知り、賢治は見知らぬニューファンドランド、そして「三位一体」の意味を持つトリニティ(Trinity)という町の名前に想像力をかきたてられたのかもしれません。
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エリストン
Elliston
ディスカバリー世界ジオパーク内の10のジオサイトのひとつ、エリストンへ。この町には、風光明媚な入り江の美しい砂浜があるだけでなく、岬にはニューファンドランド&ラブラドール州の州鳥として知られるカラフルなパフィン(ニシツノメドリ)が数百羽生息しています。夏の間、子育てのために無数のパフィンがやってきて、まったく警戒することなくあたりをトコトコ歩いているため、愛くるしいパフィンを至近距離からカメラにおさめられます。あまりにもキュートな姿に思わず微笑んでしまうことでしょう。
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ダンジョン州立公園
Dungeon Provincial Park
ボナビスタ半島の北部に点在するドラマチックな自然の景観。岬の海岸線には、大西洋の強力な浸食波作用をよく伝えるダンジョン州立公園があります。ここもディスカバリー世界ジオパークのジオサイトのひとつ。ダンジョンは絶え間ない浸食によって、このハート形のユニークな景観が作られました。岩を削り続ける波の絶え間ない音を聞きながら、悠久の自然の力を感じてみましょう。
ダンジョンの未来がどのようなものか見てみたいなら、州立公園の近くのスピラーズ・コーブにある「チムニー(The Chimney)」まで足を運んでみましょう。文字通り、煙突のような形をした海食柱は、浸食の凄さを物語っています。
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ジョン・カボット像
John Cabot Statue
ボナビスタ半島では太古の自然だけでなく、最東端の地ならではの入植の歴史を感じる場所もあります。1497年、イタリアの探検家ジョン・カボット(ジョバンニ・カボット)が初めて北米に目を向けたとき、彼が最初に発した言葉は 「O buono vista!(幸せな光景)」 でした。ボナビスタの魅力に触れた人なら、その言葉が、カボットが上陸した歴史的な場所であるボナビスタの町にぴったりであると感じるはずです。その後、ボナビスタは何世紀もの時を経て、過去の物語を語り、未来の物語を記しています。この情緒あふれる町を歩きながら、歴史の経過を想像してみましょう。
ボナビスタ半島にある「ディスカバリー世界ジオパーク」で自ら自然に触れることで、「地質遺産が自然環境や地域の文化への理解を深め、自然と人間との共生及び持続可能な開発を実現する」というユネスコの目的を体感することができます。キュートなパフィンの表情を思い出しながら、幸せな気分で明日の冒険へ備えます。
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トウィリンゲート
Twillingate
アイスバーグ・アレーで 出会う氷山
この日はニューファンドランド島北東の町、トウィリンゲートへ。ここはニューファンドランド&ラブラドール州の多くの沿岸地域が誇る、素晴らしい海岸線、歴史的な美しい町並み、緑豊かな田舎道など、あらゆるものを体現しています。トウィリンゲートは、グリーンランドから続く広大な海の回廊「アイスバーグ・アレー」の通過地点のひとつです。奇跡のような氷山との出会いが待っています。
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氷山ウォッチング
Iceberg Watching
氷山の首都として知られるトウィリンゲートは、グリーンランドで数万年前に北極に降り積もった雪が凍って氷河となり、そこから崩れ落ちた巨大な氷のかたまりが「氷山」となって海に流れ出す、「アイスバーグ・アレー」の通過地点のひとつ。この自然界の巨人の姿を眺めるのに最高の場所のひとつです。氷山は、その大きさにもかかわらず、1日に平均17キロ(約10マイル)移動します。
氷山ウォッチングのベストシーズンは毎年5月中旬から7月中旬。トウィリンゲートでは、氷山ウォッチングのボートツアーがあり、この奇跡のような自然の構造物に近づくことができます。その海上に浮かぶ神秘的な姿は実際にその目で見た人にしかわからない特別なものなのです。
そしてせっかくならグラスを持参して、氷山のかけらを入れてみましょう。海水が凍ってできる「流氷」とは違い、「氷山」の氷は溶かせば真水になります。グラスの中で氷が解けるとシュワシュワという音が聞こえてきます。この音は、氷山に閉じ込められた空気の泡が逃げるときに発生するものです。他ではできない体験です。
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ホエール・ウォッチング
Whale Watching
ニューファンドランド&ラブラドール州は、世界有数のホエールウォッチングスポット。
毎年、5月中旬から9月にかけて、15メートル近くにまで成長する大型クジラのザトウクジラが、沖合に生息するシシャモやオキアミ、イカを目当てに毎年、このエリアに戻ってきます。このほかシャチやゴンドウクジラなど21種ものクジラやイルカが集まります。クジラを追って船に乗り、巨大な尾ビレが海面に躍り出たときに胸が高鳴る感動を体験してみましょう。
トゥイリンゲートにはツアーオペレーターがクジラや氷山、その他の海洋生物を間近に見られるホエール・ウォッチングツアーを毎日催行しています。
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木造船博物館
Wooden Boat Museum
トウィリンゲートの木造船建造の歴史を保存し、その技術を伝承することを目的としています。昔ながらの漁師の町らしく、船づくりが盛んだった港としての歴史を持ちます。ここで製造された大型の船は、タラ漁のためニューファンドランド北部で使われたり、西インド諸島に干塩ダラを運ぶのに使われたりしてきました。この港で作られた最も小型の船はパント(Punt)と呼ばれる。小回りが効き港や入り江などで人や物を運ぶのに重宝されました。ニューファンドランドには「A pig, a punt and a potato patch」という言葉があります。この島で生きていくのに欠かせないものとして、豚やジャガイモ畑とともにパントが挙げられています。日々の食べ物と同じくらい身近な存在である船。漁師の町らしい表現です。
まるで生命を宿っているかのような巨大な氷山との出会いは、自分が抱いていた自然のスケール感も時間軸も全く新しいものへと変えてくれました。いよいよ明日は最終日。ユネスコ回廊の中でも圧倒的なスケールと人気を誇る、ユネスコ世界遺産「グロスモーン国立公園」を目指します。
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グロスモーン国立公園
Gros Morne National Park
氷河が創った世界で 地球の鼓動を感じる
いよいよニューファンドランド島の西岸に位置するグロスモーン国立公園まで移動します。ここは数億年の地殻変動の様子を伝える自然公園。グロスモーンとは「偉大なる絶壁」の意味しており、氷河がつくり上げた自然の造形美の中でハイキングをしたり、クルーズ船で進めば、太古の地球の歴史に圧倒されます。ここには「絶景」というひと言では表せない、壮大な体験が待っています。
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世界遺産「グロスモーン国立公園」の大地を歩く
観光船が進む湖は、およそ1万5千年かけて氷河が大地を削り取った痕跡。左右にそびえ立つ断崖は高いところで700メートル以上あります。湖底までの深さを合わせると、氷河は900メートル近くも大地を抉りながら、ゆっくりと海に滑り落ちていったことになります。それはもう驚きと言うしかありません。
ニューファンドランド島の西岸に位置するユネスコ世界自然遺産「グロスモーン国立公園」。中でも氷河の壮大な物語を感じることができる、ウェスタンブルックポンドの観光船ツアーは絶対に外せない体験。かつてこの世界遺産をつくりあげた巨大な氷は、運んできた土砂を海底に盛り上げて海の中に「丘」をつくりました。その「丘」の住みやすさが魚を呼び寄せ、魚が人を呼び寄せました。豊かな海の幸のおかげで、人々はここにウッディポイントをはじめ、素敵な集落をつくることになったのです。この自然とコミュニティとの繋がりを知ることで、グロスモーン国立公園への畏敬の念は大きくなります。
一方、赤茶けた巨大な台地「テーブルランド」は、地球の「核」近くにあるはずのマントル。それがどうして地表に飛び出しているのか。プレートテクトニクスによる大陸移動が地上にマントルを現出させたのだと分かるまで、「テーブルランド」は地質学者たちを悩ませ続けてきました。この地質学的な重要性もまた、1987年の世界遺産登録の理由となりました。氷河の造形物とマントルの台地に出会ったあとは、その足でウッディポイントの町を巡りましょう。地球の悠久の営みと、われわれ人間の小さな、小さな営みがシンクロしているように思えてきます。この場に立てている奇跡に、思わずため息ともつかない声が漏れてしまうことでしょう。
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ウッディポイント
Woody Point
天然の良港として海産物の取引や海軍の拠点として栄えてきたウッディポイントは今、画家や音楽家、作家などが集まるアーティスティックな町となっています。昔の面影を残す建物はサマーハウスなどとして人気を博し、かつての教会も音楽などを楽しむ場として生まれ変わりました。ラグフッキングを扱うおしゃれなクラフトショップなども並んでいます。不思議なことに、グロスモーン国立公園の地球の悠久の営みと、私たち人間の小さな、小さな営みがシンクロしているように思えてきます。この場に立てている奇跡に、思わずため息ともつかない声が漏れてしまいます。
キッチンパーティー
Kitchen Party
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ニューファンドランドのコミュニティに溶け込む体験。それが一緒に飲んで騒いで踊るのが大好き。キッチンパーティーです。楽器が演奏できない人は、2本のスプーンを重ねてカスタネットのように鳴らしたり、棒やモップにビール瓶の王冠などを打ち付けた「アグリースティック」でリズムをとったり。独特のステップで踊り、歌い、一息ついてグラスを重ね、さらにワイワイ、ガヤガヤ。楽しい時だけではなく、悲しいことがあった時も、この島ではみんながキッチンに集まって乗り越えてきました。ここでは、いつもなら抱いている「照れ」を捨てて、思いっきり楽しみましょう。
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ニューファンドランド島の「偉大なる絶壁」で出会った、1万5千年かけて氷河が大地を削り取って作られたフィヨルド、そして数億年前の地殻変動でマントルが地上に押し出されたテーブルランド。グロスモーン国立公園は太古の地球の歴史そのものであり、地球の鼓動を感じながら心が解放され、前へ進む力が沸いてきます。
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ランス・オ・メドー国定史跡
L'Anse aux Meadows National Historic Site
大西洋を渡った 北欧バイキングの集落へ
最終日にやってきたのはニューファンドランド島最北端にある、1978年に最初の世界遺産のひとつとして登録されたランス・オ・メドー国定史跡。1000年以上も昔、グリーンランドから航海してきた北欧バイキングが上陸し、小さな集落を築いた場所です。北米最果ての地で、カナダの本当の歴史の始まりを知り、壮大な冒険の痕跡を辿ります。
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世界遺産「ランス・オ・メドー国定史跡」で歴史を辿る
冒険の果てにある新しい発見。その歴史が形となって残っているのがニューファンドランド島最北端にある、ランス・オ・メドー国定史跡。北欧の物語「サガ」に描かれているバイキングが目指した「ヴィンランド」は、伝説に過ぎないと考えられていました。しかし、1960年にノルウェーの探検家のヘルゲ・イングスタッドと妻で考古学者のアン・イングスタッドが小さなマントピンを発見したことですべてが変わりました。この発見をきっかけにした、その後の調査で船作りに使用された製材所や溶鉱炉の跡、多くの生活道具が発見。ニューファンドランド&ラブラドール(彼らが「ヴィンランド」と呼んだ場所)に入植し、定住したことが証明されたのです。そして、何とそれはコロンブスが新大陸を発見するより500年以上も前のことでした。
現在、遺跡の近くには、当時の住居や船などを復元したバイキング村があり、バイキングの生活の様子を知ることができます。再現された野営地では、昔ながらの鍛冶や機織りを体験したり、バイキングの歴史を生き生きと語る案内人と話をすることも。まるでタイムスリップした気分を味わいながら最果ての地に立つと、バイキングの壮大な冒険と、その旅の果てで発見した「新しく見出された土地」の尊さを感じずにはいられません。
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カラフルな街並みから始まったニューファンドランド島の旅では、入植の歴史を学び、太古の地球を体感し、コミュニティに触れて、冒険心を刺激することができます。キッチンパーティーでニューファンドランドの人々と笑顔で飲んで、踊って、歌ったときに、走馬灯のようによみがえるユニークな時間。一生忘れることが出来ない思い出とともに、明日から始まる新しい冒険へ胸が高鳴ります。カナダ最東端の地、ニューファンドランド島。ここは全ての旅人にとって、そんな新しいチャプターを開くきっかけになる場所です。
ここもチェック!
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レッドベイのバスク人捕鯨 基地
Red Bay Basque Whaling Station
もしも日程に余裕があれば、フェリーでラブラドール地方へ渡り、世界遺産「レッドベイのバスク人捕鯨基地」へ。ニューファンドランド島のセント・バーブからケベック州のブラン・サブロンまで毎日運航しているフェリー(所要時間1.5時間)を利用して、東に車で1時間ほどでアクセスできます。16世紀にスペイン少数民族のバスク人によって捕鯨活動が行われていた場所。この地には、製油装置や桶といった遺物や、波止場や墓地などの遺構が残されています。また、陸上の遺跡のほか、海底には当時の捕鯨方法や造船技術を伝える沈没船があり、水中文化遺産として歴史的に重要な場所となっています。
その他の物語
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ノバ・スコシア州/ニュー・ブランズウィック州
大西洋の潮風に誘われて
心が繋がるユネスコ回廊を辿る
カナダ東部の大西洋に面したノバ・スコシア州とニュー・ブランズウィック州。港町が伝える遠洋航海のロマンと、小さなコミュニティに息づく入植者たちの想い。絶景の中にそれぞれの歴史と物語があり、一体感に溢れています。 カナダ入植の歴史に触れて、世界一の干満差を誇る湾で自然の驚異を体感したら、地元の絶品シーフードに舌鼓を打つ。数々の感動がひとつの物語となり、心が繋がるユネスコ回廊を辿ってみましょう。
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プリンス・エドワード島州
赤毛のアンの島で触れるサステナブルで豊かな暮らし
カナダの大西洋沿岸、セント・ローレンス湾に浮かぶプリンス・エドワード島。名作「赤毛のアン」の舞台となった島として有名ですが、物語で描かれる牧歌的な農村の生活は、今でも息づき、旅人にも真の豊かさとは何かを気づかせてくれます。美しい風景と地産地消の美食を堪能しながら、サステナブルで豊かな暮らしを体験してみましょう。