想像力豊かでおしゃべり好きな女の子が、活き活きと生きる姿を描いた不朽の名作『赤毛のアン』。その舞台として知られるプリンス・エドワード島は、赤土と青い海、彩あふれる花、白い灯台、開放感あふれる風景など、その美しさから「世界で一番美しい島」と称されます。この島を訪れると、まるでアンのように心豊かに暮らす人々が、私たち旅人を心から歓迎してくれます。地産地消の食に触れ、歴史あるヘリテージインに滞在し、島の歴史や文化を触れてみる。そんな時間を通して、島の豊かさとホスピタリティを感じることができるのです。オープンな心でコミュニティの中に入り、美しい風景の中でサステナブルで豊かな暮らしを体験してみましょう。
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シャーロットタウン
Charlottetown
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キャベンディッシュ
Cavendish
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マルペック湾
Malpeque Bay
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ベイ・フォーチュン
Bay Fortune
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プリンス・エドワード島の灯台
Lighthouses in PEI
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シャーロットタウン
Charlottetown
カナダ発祥の地を訪ねる
初日は、プリンス・エドワード島州の州都シャーロットタウンで街歩き。この街は、1864年に建国議会が開かれ、1867年7月1日のカナダ建国へとつながったことから「カナダ連邦発祥の地」と呼ばれています。その出発地点で歴史的な建物やお洒落なカフェやレストランが並ぶビクトリア・ロウを歩けば、島の人々の活気に触れることができるでしょう。
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プロビンス・ハウス
Province House
小さな町から溢れる大きなエネルギー。シャーロットタウンは「カナダ連邦発祥の地」として知られていますが、その舞台となったのが、グレート・ジョージ通りに位置する4本の円柱が象徴的なネオクラシック様式のプロビンスハウスです。1864年9月、ここは植民地連合に関する初の会議の舞台となりました。プリンス・エドワード島州、ニュー・ブランズウィック州、ノバ・スコシア州、カナダの各植民地から代表者が集まり、1867年の連邦結成につながる協議を開始したのです。現在の賑やかで温かい町の雰囲気から想像できませんが、ここはカナダの歴史において重要な瞬間を刻んだ場所なのです。
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グレート・ジョージ通り
Great George Street
シャーロットタウンのグレート・ジョージ通りは、カナダで最も歴史的に重要な通りのひとつです。港からプロビンス・ハウスまで続く通りは、1864年に連邦結成の代表者たちが歩いた道です。通り沿いには、当時の建物やセント・ダンスタンズ大聖堂、グレート・ジョージ・ホテルなど見どころが集まります。中でも印象的なのが2人の男性のブロンズ像。これはプリンス・エドワード島州のジョン・ハミルトン・グレイと、ニュー・ブランズウィック州のジョン・ハミルトン・グレイをモチーフにしたもの。何とも興味深いことに、連邦結成の父2人は、まったく同じ名前なのです。この像は、カナダのブリティッシュ・コロンビア州出身の彫刻家ネイサン・スコット氏によって制作されました。彼らの表情を見ながら連邦結成に向けた彼らの情熱を想像してみましょう。
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ファーマーズ・マーケット
Farmer’s Market
シャーロットタウンにあるプリンス・エドワード島で最大のファーマーズ・マーケット。毎週土曜日に開催(夏は水曜日も開催)されます。島の人々の憩いの場、社交の場として賑わいが絶えません。まるで昔からの知人に会ったようなアットホームな感覚になれるのも、この島ならでは楽しみ方でしょう。地元の農作物、肉類、チーズやパンなど、生産者に直に会って言葉を交わし、質問をしながら購入できるところが魅力です。イートインスペースもあるので、気軽に自分のお気に入りのものを買ってその場で食べることができるのも嬉しいですよね。
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コンフェデレーション・センター・オブ・ジ・アーツ
Confederation Centre of the Arts
シャーロットタウンの中心部に位置するコンフェデレーション・センター・オブ・ジ・アーツは、建国会議100周を年記念して設立された総合アートセンターです。この劇場で注目は、夏の期間に開催されるミュージカル『赤毛のアン』です。赤毛のアンのファンはもちろん、そうでなくても本場のミュージカルは一見の価値ありです。さらにカナダ人アーティストによるアート作品16,000点以上を所蔵しているアートギャラリーもお見逃しなく。
州都シャーロットタウンで、地元の人々の活気と建国の歴史に触れたあと、次は不朽の名作『赤毛のアン』の世界を訪ねます。
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キャベンディッシュ
Cavendish
小説『赤毛のアン』の世界に没入する
シャーロットタウンから車で40分、小説『赤毛のアン』の世界へ。ここは赤毛のアンが住んでいた村のモデルで、赤毛のアンが住んでいた家のモデルや小説に出てくる場所が大事に残されています。グリーン・ゲイブルズ・ハウス、お化けの森や恋人の小径、モンゴメリの住居跡や墓地などを巡りましょう。
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グリーン・ゲイブルズ・ヘリテージ・プレイス
Green Gables Heritage Place
キャベンディッシュは著者モンゴメリの故郷で『赤毛のアン』ではアヴォンリーと名付けられています。物語の舞台となったグリーン・ゲイブルズには、戸棚の中のいちご水や割れた石板など、各部屋に作中の世界が再現されています。台所の鉄製ストーブや寝室のチューリップ柄のパッチワークキルトなど、物語の世界とともに19世紀末にプリンス・エドワード島で生きた人々の日常生活に触れることができます。また、併設するビジターセンターにはモンゴメリやアンに関する資料が展示されています。裏手にある「恋人たちの小径」でアンの気持ちに想いを馳せながら、森の中のトレイルを散策してみましょう。
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L・M・モンゴメリ生家
Lucy Maud Montgomery Birthplace
ニューロンドンの絵のように美しい村、クリフトンにあるモンゴメリの生家。1874年11月30日にこの家で生まれました。この生家には、モンゴメリのウェディングドレスのレプリカがあり、フランクリンストーブなどの当時の家具、モンゴメリの親族が所有していたオルガン、骨董品や当時の品も家のあちこちに展示されています。展示室のガラスケースの中には、モンゴメリの作品を掲載した新聞や雑誌のスクラップブック、そしてモンゴメリが友人宛てに書いた便箋38枚にわたる手紙も。モンゴメリの物語に溢れた生涯を実感し、胸が熱くなることでしょう。
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モンゴメリ・キャベンディッシュ・ホーム
(モンゴメリ住居跡)
Site of Lucy Maud Montgomery's Cavendish Home
モンゴメリの母方の祖父母の農場で、彼女が母を亡くしてから、結婚して島を離れるまで暮らした場所。モンゴメリは「ここは私にとって神聖な場所であり、これからもずっとそうあり続ける」と語っており、彼女はここで『赤毛のアン』をはじめとした小説を執筆し、何百もの短編小説や詩を書き上げました。敷地内にはモンゴメリの日記から引用した文章や写真を紹介したプレートがあり、モンゴメリが過ごした時間に思いをめぐらせながら、散策することができます。
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ザ・テーブル
The Table
モンゴメリの生家の近くにある、古い教会をリノベーションしたレストラン。このレストランの特別なところは、プリンス・エドワード島中から集めた地元食材にこだわったコースメニューをふるまってくれること。各料理の紹介時には、食材を提供する農家や生産者のエピソードにも触れ、島の人々や暮らしに想いを馳せながら一品一品を堪能することができます。また、料理に合わせたワインも全てカナダ産というこだわりぶり。オープンキッチンなので、シェフが島の食材で大いに腕を振るっている様子を楽しみながら、島の季節の素材をゆっくり堪能しましょう。
この美しい島で実際に『赤毛のアン』の世界に触れたあと、もう一度小説を読んだら、きっと今まで感じたことがない没入感を味わえることでしょう。
ここもチェック!
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Raspberry Cordial
ベリーの産地、プリンス・エドワード島ならではのラズベリー風味のスパークリング飲料。小説『赤毛のアン』でも「Raspberry Cordial」(日本語訳では「いちご水」)として登場します。アンが、マリラがこっそり隠していた葡萄酒を「いちご水」と間違ってダイアナに飲ませてしまい、ダイアナはひどく酔っ払ってしまうシーンは『赤毛のアン』の物語の名場面のひとつです。アンが大好きな真っ赤な飲み物を味わってみませんか。
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マルペック湾
Malpeque Bay
PEIオイスターの誕生の地
プリンス・エドワード島(PEI)は、新鮮なロブスターで知られていますが、牡蠣も見逃せません。1900年のパリ万国博覧会で1位を獲得したPEI産の牡蠣は、品質と味のよさで知られ、北米のレストランでも最上級のブランドとして珍重されています。この日は島の西部のマルペック湾へ。PEIオイスターの誕生の地で地元の漁師の話を聞きながら最高級の牡蠣を味わいます。その後、ミクマク族の居留地レノックス島で、PEIの先住民の歴史や文化、コミュニティに触れてみましょう。
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バレー・パール・オイスター
Valley Pearl Oyster
オイスター(牡蠣)の産地としても有名なマルペック湾で、牡蠣漁の体験プログラムが提供されています。オーナーは、ジェフとダミアン。ジェフは、オイスターシャッキング(牡蠣の殻むき)コンテストでも優勝経験がある牡蠣のマイスター。そしてダミアンは牡蠣漁の家系に生まれた生粋のオイスターフィッシャーマンです。2人のミッションは、世界中の人々に彼らのように牡蠣を楽しみ牡蠣好きになってもらいたい!ということ。牡蠣漁体験ツアーでは、自分で採った牡蠣をすぐさま屋内のオイスターバーエリアへ持ち込みます。そこではシャッキング方法も教えてくれます。自分で採った牡蠣をすぐさま食べる―牡蠣好きにとってこれほどの贅沢はありません。PEIの牡蠣は1900年のパリ万博で賞を受賞した、味も質も世界に認められた逸品。そんな牡蠣がどのように育てられ収穫されているのか、絶品の牡蠣と一緒に、オーナーの熱い思いをぜひ味わってみてください。
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モスレーン・ブリューイング
Moth lane Brewing
ここはプリンス・エドワード島で海の絶景を眺めながら楽しめる地ビール醸造所です。しかも、隠れ家のように見つけにくいのです。道に迷いながらたどり着いた先には、素晴らしい眺望とおいしいビールが待っている人気上昇中の地ビールなのです。ぜひ試してほしいのは、Oyster Thief Stoutという牡蠣のエキスを隠し味としたビール。牡蠣の産地マルペック湾を望む地の利を生かした、オーナー自慢のビールです。レストランでは、屋外デッキでBBQも楽しむことができます。ビール片手にウッドチェアーにリラックス。海を眺めながらのんびりとビールを味わいましょう。
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レノックス島
Lennox Island
牡蠣の養殖で名高いマルペック湾にあるレノックス島へ。ここは、1876年に制定されたインディアン法により、カナダ政府の認める先住民の居留地です。プリンス・エドワード島に4か所ある先住民の居留地のうち、レノックス島が最大のコミュニティです。この島にはミクマク族の歴史と文化を紹介する「ミクマク・カルチャーセンター」があり、写真などの展示を見るだけでなく、ミクマク族の文化を知るためのワークショップも体験できます。自然の中に神を見出し、植物や動物と共に生きる、伝統的なミクマク族の暮らしを感じてみましょう。
マルペック湾で出会ったPEIオイスター。そこには美味しいを超えた発見がありました。さらにPEIの先住民の歴史や文化に触れることで、この美しい島の尊さを感じることができるのです。
ここもチェック!
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Oyster Art
タイン・ヴァレーのスタジオ兼ギャラリー「Oyster Art」では、PEIオイスター誕生の地ならではのユニークなアート作品に出会えます。写真家のデビー・ブレイディは、牡蠣の殻の中にある細部を特殊なマイクロ撮影技術で撮影して、それをアート作品として表現しています。普段は想像することもできない、オイスターがもつ神秘的な美しさを確かめてみましょう。
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ベイ・フォーチュン
Bay Fortune
美食の宿で過ごす至福の時間
世界で一番美しい島に、世界中の美食家が注目する宿があります。カナダの有名シェフが経営する「The Inn at Bay Fortune」で、地産地消の食材に触れ、美食に舌鼓を打ち、カナダ各地から訪れる人々と言葉を交わす、一生忘れられない"贅沢すぎる"時間を過ごしましょう。
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ジ・イン・アット・ベイフォーチュン
The Inn at Bay Fortune
カナダの有名シェフのマイケル・スミスがプリンス・エドワード島の食材の豊かさに魅了され、この島を「美食の島」として紹介するためにホテルを買い取り、リニューアルした、美食とコミュニティの宿。島の東部、ベイ・フォーチュンの入り江をのぞみ、美しい海辺の景色と広大な農場に囲まれています。マイケル・スミスの料理は地元の恵みをふんだんに使用した、生産者と一体になって作り出すハーモニーのような料理。テレビ番組などで忙しくなった彼は一度島を離れますが、島の新鮮で良質な食材が忘れられず、島に戻り、自分の出発点となったこの宿を購入、夢を叶えるためにグルメ宿として生まれ変わらせました。
特別な時間は、オーガニックな農業を実践する農場責任者がガイドするファームツアーに参加することから始まります。続いて、薪や炭火から立ち昇る煙と、さまざまな食材の放つ香ばしい匂いを楽しむ前菜アワーへ。その後、フラッグポール(旗の掲揚台)の下で、島の歴史を刻んできた先住民とフランス系住民たちへ敬意を表して乾杯します。そして、いよいよディナーが始まり、美食に舌鼓を打ちます。アペタイザーは、庭に設置されたフードステーションを巡りながら楽しみます。スモークミート、スモークサーモンや生牡蠣など、様々な前菜を一口サイズで好きなだけ食べて回ることができます。その後は屋内に入り、メインダイニングでシェフのクッキングを見ながら季節のコース料理をいただきます。使われる食材は、島で収穫できないものを除いて100%プリンス・エドワード島産です。しかも、マイケルが選りすぐった生産者から選りすぐった食材を仕入れているので、素材の美味しさはお墨付き。
そこで出会った人々と食卓を共にしながらディナーを味わう、温かい時間は至福のひと時。他では体験できない「フィースト(饗宴)」を通して、島に心から歓迎された気分になることでしょう。
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プリンス・エドワード島の灯台
Lighthouses in PEI
美しい灯台の風景を巡る
美しい島の風景に欠かせない個性豊かな灯台。プリンス・エドワード島には61の灯台があり、北米で最も灯台が密集している場所と言われています。『赤毛のアン』シリーズにも灯台が登場しています。赤い土、青い空と海、緑の草地は、島を象徴する3つの色。それらが灯台の白と重なり合い、他にはない情景を作り出します。自動車や自転車に乗って、あなただけの最高の風景を探してみましょう。
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コーブヘッド灯台
Covehead Harbour Lighthouse
プリンス・エドワード・アイランド国立公園の砂丘の中、コーブヘッド湾の入り口の東側の海岸に位置する小さな灯台。かつては、コーブヘッド湾の案内灯として、地元の漁業コミュニティにとって重要な役割を果たしました。高さ8.2メートルの木造の塔の上に、四角い木製のランタンが乗っており、先が細くなっている見た外観が人気で、現在は、プリンス・エドワード島で最も多く撮影されている灯台のひとつとして、島の海洋遺産を象徴する重要な存在となっています。
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ポイント・プリム灯台
Point Prim Lighthouse
1845年に建てられたプリンス・エドワード島で最も古い灯台。島で唯一の丸いレンガ造りのユニークな灯台です。シャーロットタウンのプロビンス・ハウスを手がけた建築家、アイザック・スミスが設計し、リチャード・ウォルシュによって建てられました。灯台の上から眺めるノーサンバーランド海峡の壮大な景色は圧巻です。入場料にはガイドツアーも含まれているので、灯台の物語に触れてみましょう。この場所はコミュニティパークとして整備され、ピクニックやイベントで地元の人たちに人気の「遊び場」となっています。
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セント・ピーターズ・ハーバー灯台
St. Peters Harbour Lighthouse
プリンス・エドワード島の北岸にあるアカディアのルーツを持つ地域に位置するセント・ピーターズ・ハーバー。19世紀中頃から後半にかけて、重要な漁業と造船のコミュニティへと発展しました。今も昔もこの灯台はこの漁業で栄えるコミュニティを支える航路標識となっています。コーブヘッド灯台と同じように約10メートル四方の先細りの木造の塔には、六角形のランタンが備え付けられています。
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ウェストポイント灯台
West Point Lighthouse
プリンス・エドワード島の西部にある白黒の縞々のウェストポイント灯台は、数ある灯台の中でもひときわ特徴があります。この灯台には宿泊施設も併設されており、灯台の中で眠り、穏やかに打ち寄せる波の音を聞きながら眠りにつき、壮大な夕日を楽しむといった特別な体験も。オーナーと灯台の魅力について語ることができるのも、ウェストポイント灯台の魅力です。
島に点在する灯台にはひとつひとつの物語があり、灯台巡りは特別に情緒的な体験となります。プリンス・エドワード島で体験した数えきれないほどの幸せな思い出とともに、これらの美しい風景を心のアルバムに刻みましょう。
ここもチェック!
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French River
美しい風景が溢れるプリンス・エドワード島を象徴する場所として人気を集めるフレンチ・リバー。入江に面したなだらかな丘陵、広大な農地を一望できる風景は、世界中の写真家に撮影されている場所です。
その他の物語
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ノバ・スコシア州/ニュー・ブランズウィック州
大西洋の潮風に誘われて
心が繋がるユネスコ回廊を辿る
カナダ東部の大西洋に面したノバ・スコシア州とニュー・ブランズウィック州。港町が伝える遠洋航海のロマンと、小さなコミュニティに息づく入植者たちの想い。絶景の中にそれぞれの歴史と物語があり、一体感に溢れています。 カナダ入植の歴史に触れて、世界一の干満差を誇る湾で自然の驚異を体感したら、地元の絶品シーフードに舌鼓を打つ。数々の感動がひとつの物語となり、心が繋がるユネスコ回廊を辿ってみましょう。
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ニューファンドランド&ラブラドール州
カナダ最東端の島で出会う氷河が創った彩り豊かな世界
ニューファンドランド島は、太古の地球を体感できる場所。氷河が大地を削り取った巨大なフィヨルド、地上に露出したマントルなど創成期の地球の姿を目の当たりにします。沖にはゆっくり氷山が流れ、海鳥パフィンが舞い、遠くでクジラが潮を吹き上げる。歴史が薫る街や漁村を歩くと人々の賑やかな声が聞こえ、ニューファンドランド独特の伝統や文化に気付きます。最東端の島でカラフルで幸せな時間を。
想像力豊かでおしゃべり好きな女の子が、活き活きと生きる姿を描いた不朽の名作『赤毛のアン』。その舞台として知られるプリンス・エドワード島は、赤土と青い海、彩あふれる花、白い灯台、開放感あふれる風景など、その美しさから「世界で一番美しい島」と称されます。この島を訪れると、まるでアンのように心豊かに暮らす人々が、私たち旅人を心から歓迎してくれます。地産地消の食に触れ、歴史あるヘリテージインに滞在し、島の歴史や文化を触れてみる。そんな時間を通して、島の豊かさとホスピタリティを感じることができるのです。オープンな心でコミュニティの中に入り、美しい風景の中でサステナブルで豊かな暮らしを体験してみましょう。
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シャーロットタウン
Charlottetown
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キャベンディッシュ
Cavendish
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マルペック湾
Malpeque Bay
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ベイ・フォーチュン
Bay Fortune
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プリンス・エドワード島の灯台
Lighthouses in PEI
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シャーロットタウン
Charlottetown
カナダ発祥の地を訪ねる
初日は、プリンス・エドワード島州の州都シャーロットタウンで街歩き。この街は、1864年に建国議会が開かれ、1867年7月1日のカナダ建国へとつながったことから「カナダ連邦発祥の地」と呼ばれています。その出発地点で歴史的な建物やお洒落なカフェやレストランが並ぶビクトリア・ロウを歩けば、島の人々の活気に触れることができるでしょう。
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プロビンス・ハウス
Province House
小さな町から溢れる大きなエネルギー。シャーロットタウンは「カナダ連邦発祥の地」として知られていますが、その舞台となったのが、グレート・ジョージ通りに位置する4本の円柱が象徴的なネオクラシック様式のプロビンスハウスです。1864年9月、ここは植民地連合に関する初の会議の舞台となりました。プリンス・エドワード島州、ニュー・ブランズウィック州、ノバ・スコシア州、カナダの各植民地から代表者が集まり、1867年の連邦結成につながる協議を開始したのです。現在の賑やかで温かい町の雰囲気から想像できませんが、ここはカナダの歴史において重要な瞬間を刻んだ場所なのです。
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グレート・ジョージ通り
Great George Street
シャーロットタウンのグレート・ジョージ通りは、カナダで最も歴史的に重要な通りのひとつです。港からプロビンス・ハウスまで続く通りは、1864年に連邦結成の代表者たちが歩いた道です。通り沿いには、当時の建物やセント・ダンスタンズ大聖堂、グレート・ジョージ・ホテルなど見どころが集まります。中でも印象的なのが2人の男性のブロンズ像。これはプリンス・エドワード島州のジョン・ハミルトン・グレイと、ニュー・ブランズウィック州のジョン・ハミルトン・グレイをモチーフにしたもの。何とも興味深いことに、連邦結成の父2人は、まったく同じ名前なのです。この像は、カナダのブリティッシュ・コロンビア州出身の彫刻家ネイサン・スコット氏によって制作されました。彼らの表情を見ながら連邦結成に向けた彼らの情熱を想像してみましょう。
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ファーマーズ・マーケット
Farmer’s Market
シャーロットタウンにあるプリンス・エドワード島で最大のファーマーズ・マーケット。毎週土曜日に開催(夏は水曜日も開催)されます。島の人々の憩いの場、社交の場として賑わいが絶えません。まるで昔からの知人に会ったようなアットホームな感覚になれるのも、この島ならでは楽しみ方でしょう。地元の農作物、肉類、チーズやパンなど、生産者に直に会って言葉を交わし、質問をしながら購入できるところが魅力です。イートインスペースもあるので、気軽に自分のお気に入りのものを買ってその場で食べることができるのも嬉しいですよね。
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コンフェデレーション・センター・オブ・ジ・アーツ
Confederation Centre of the Arts
シャーロットタウンの中心部に位置するコンフェデレーション・センター・オブ・ジ・アーツは、建国会議100周を年記念して設立された総合アートセンターです。この劇場で注目は、夏の期間に開催されるミュージカル『赤毛のアン』です。赤毛のアンのファンはもちろん、そうでなくても本場のミュージカルは一見の価値ありです。さらにカナダ人アーティストによるアート作品16,000点以上を所蔵しているアートギャラリーもお見逃しなく。
州都シャーロットタウンで、地元の人々の活気と建国の歴史に触れたあと、次は不朽の名作『赤毛のアン』の世界を訪ねます。
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キャベンディッシュ
Cavendish
小説『赤毛のアン』の世界に没入する
シャーロットタウンから車で40分、小説『赤毛のアン』の世界へ。ここは赤毛のアンが住んでいた村のモデルで、赤毛のアンが住んでいた家のモデルや小説に出てくる場所が大事に残されています。グリーン・ゲイブルズ・ハウス、お化けの森や恋人の小径、モンゴメリの住居跡や墓地などを巡りましょう。
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グリーン・ゲイブルズ・ヘリテージ・プレイス
Green Gables Heritage Place
キャベンディッシュは著者モンゴメリの故郷で『赤毛のアン』ではアヴォンリーと名付けられています。物語の舞台となったグリーン・ゲイブルズには、戸棚の中のいちご水や割れた石板など、各部屋に作中の世界が再現されています。台所の鉄製ストーブや寝室のチューリップ柄のパッチワークキルトなど、物語の世界とともに19世紀末にプリンス・エドワード島で生きた人々の日常生活に触れることができます。また、併設するビジターセンターにはモンゴメリやアンに関する資料が展示されています。裏手にある「恋人たちの小径」でアンの気持ちに想いを馳せながら、森の中のトレイルを散策してみましょう。
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L・M・モンゴメリ生家
Lucy Maud Montgomery Birthplace
ニューロンドンの絵のように美しい村、クリフトンにあるモンゴメリの生家。1874年11月30日にこの家で生まれました。この生家には、モンゴメリのウェディングドレスのレプリカがあり、フランクリンストーブなどの当時の家具、モンゴメリの親族が所有していたオルガン、骨董品や当時の品も家のあちこちに展示されています。展示室のガラスケースの中には、モンゴメリの作品を掲載した新聞や雑誌のスクラップブック、そしてモンゴメリが友人宛てに書いた便箋38枚にわたる手紙も。モンゴメリの物語に溢れた生涯を実感し、胸が熱くなることでしょう。
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モンゴメリ・キャベンディッシュ・ホーム
(モンゴメリ住居跡)
Site of Lucy Maud Montgomery's Cavendish Home
モンゴメリの母方の祖父母の農場で、彼女が母を亡くしてから、結婚して島を離れるまで暮らした場所。モンゴメリは「ここは私にとって神聖な場所であり、これからもずっとそうあり続ける」と語っており、彼女はここで『赤毛のアン』をはじめとした小説を執筆し、何百もの短編小説や詩を書き上げました。敷地内にはモンゴメリの日記から引用した文章や写真を紹介したプレートがあり、モンゴメリが過ごした時間に思いをめぐらせながら、散策することができます。
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ザ・テーブル
The Table
モンゴメリの生家の近くにある、古い教会をリノベーションしたレストラン。このレストランの特別なところは、プリンス・エドワード島中から集めた地元食材にこだわったコースメニューをふるまってくれること。各料理の紹介時には、食材を提供する農家や生産者のエピソードにも触れ、島の人々や暮らしに想いを馳せながら一品一品を堪能することができます。また、料理に合わせたワインも全てカナダ産というこだわりぶり。オープンキッチンなので、シェフが島の食材で大いに腕を振るっている様子を楽しみながら、島の季節の素材をゆっくり堪能しましょう。
この美しい島で実際に『赤毛のアン』の世界に触れたあと、もう一度小説を読んだら、きっと今まで感じたことがない没入感を味わえることでしょう。
ここもチェック!
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Raspberry Cordial
ベリーの産地、プリンス・エドワード島ならではのラズベリー風味のスパークリング飲料。小説『赤毛のアン』でも「Raspberry Cordial」(日本語訳では「いちご水」)として登場します。アンが、マリラがこっそり隠していた葡萄酒を「いちご水」と間違ってダイアナに飲ませてしまい、ダイアナはひどく酔っ払ってしまうシーンは『赤毛のアン』の物語の名場面のひとつです。アンが大好きな真っ赤な飲み物を味わってみませんか。
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マルペック湾
Malpeque Bay
PEIオイスターの誕生の地
プリンス・エドワード島(PEI)は、新鮮なロブスターで知られていますが、牡蠣も見逃せません。1900年のパリ万国博覧会で1位を獲得したPEI産の牡蠣は、品質と味のよさで知られ、北米のレストランでも最上級のブランドとして珍重されています。この日は島の西部のマルペック湾へ。PEIオイスターの誕生の地で地元の漁師の話を聞きながら最高級の牡蠣を味わいます。その後、ミクマク族の居留地レノックス島で、PEIの先住民の歴史や文化、コミュニティに触れてみましょう。
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バレー・パール・オイスター
Valley Pearl Oyster
オイスター(牡蠣)の産地としても有名なマルペック湾で、牡蠣漁の体験プログラムが提供されています。オーナーは、ジェフとダミアン。ジェフは、オイスターシャッキング(牡蠣の殻むき)コンテストでも優勝経験がある牡蠣のマイスター。そしてダミアンは牡蠣漁の家系に生まれた生粋のオイスターフィッシャーマンです。2人のミッションは、世界中の人々に彼らのように牡蠣を楽しみ牡蠣好きになってもらいたい!ということ。牡蠣漁体験ツアーでは、自分で採った牡蠣をすぐさま屋内のオイスターバーエリアへ持ち込みます。そこではシャッキング方法も教えてくれます。自分で採った牡蠣をすぐさま食べる―牡蠣好きにとってこれほどの贅沢はありません。PEIの牡蠣は1900年のパリ万博で賞を受賞した、味も質も世界に認められた逸品。そんな牡蠣がどのように育てられ収穫されているのか、絶品の牡蠣と一緒に、オーナーの熱い思いをぜひ味わってみてください。
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モスレーン・ブリューイング
Moth lane Brewing
ここはプリンス・エドワード島で海の絶景を眺めながら楽しめる地ビール醸造所です。しかも、隠れ家のように見つけにくいのです。道に迷いながらたどり着いた先には、素晴らしい眺望とおいしいビールが待っている人気上昇中の地ビールなのです。ぜひ試してほしいのは、Oyster Thief Stoutという牡蠣のエキスを隠し味としたビール。牡蠣の産地マルペック湾を望む地の利を生かした、オーナー自慢のビールです。レストランでは、屋外デッキでBBQも楽しむことができます。ビール片手にウッドチェアーにリラックス。海を眺めながらのんびりとビールを味わいましょう。
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レノックス島
Lennox Island
牡蠣の養殖で名高いマルペック湾にあるレノックス島へ。ここは、1876年に制定されたインディアン法により、カナダ政府の認める先住民の居留地です。プリンス・エドワード島に4か所ある先住民の居留地のうち、レノックス島が最大のコミュニティです。この島にはミクマク族の歴史と文化を紹介する「ミクマク・カルチャーセンター」があり、写真などの展示を見るだけでなく、ミクマク族の文化を知るためのワークショップも体験できます。自然の中に神を見出し、植物や動物と共に生きる、伝統的なミクマク族の暮らしを感じてみましょう。
マルペック湾で出会ったPEIオイスター。そこには美味しいを超えた発見がありました。さらにPEIの先住民の歴史や文化に触れることで、この美しい島の尊さを感じることができるのです。
ここもチェック!
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Oyster Art
タイン・ヴァレーのスタジオ兼ギャラリー「Oyster Art」では、PEIオイスター誕生の地ならではのユニークなアート作品に出会えます。写真家のデビー・ブレイディは、牡蠣の殻の中にある細部を特殊なマイクロ撮影技術で撮影して、それをアート作品として表現しています。普段は想像することもできない、オイスターがもつ神秘的な美しさを確かめてみましょう。
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ベイ・フォーチュン
Bay Fortune
美食の宿で過ごす至福の時間
世界で一番美しい島に、世界中の美食家が注目する宿があります。カナダの有名シェフが経営する「The Inn at Bay Fortune」で、地産地消の食材に触れ、美食に舌鼓を打ち、カナダ各地から訪れる人々と言葉を交わす、一生忘れられない"贅沢すぎる"時間を過ごしましょう。
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ジ・イン・アット・ベイフォーチュン
The Inn at Bay Fortune
カナダの有名シェフのマイケル・スミスがプリンス・エドワード島の食材の豊かさに魅了され、この島を「美食の島」として紹介するためにホテルを買い取り、リニューアルした、美食とコミュニティの宿。島の東部、ベイ・フォーチュンの入り江をのぞみ、美しい海辺の景色と広大な農場に囲まれています。マイケル・スミスの料理は地元の恵みをふんだんに使用した、生産者と一体になって作り出すハーモニーのような料理。テレビ番組などで忙しくなった彼は一度島を離れますが、島の新鮮で良質な食材が忘れられず、島に戻り、自分の出発点となったこの宿を購入、夢を叶えるためにグルメ宿として生まれ変わらせました。
特別な時間は、オーガニックな農業を実践する農場責任者がガイドするファームツアーに参加することから始まります。続いて、薪や炭火から立ち昇る煙と、さまざまな食材の放つ香ばしい匂いを楽しむ前菜アワーへ。その後、フラッグポール(旗の掲揚台)の下で、島の歴史を刻んできた先住民とフランス系住民たちへ敬意を表して乾杯します。そして、いよいよディナーが始まり、美食に舌鼓を打ちます。アペタイザーは、庭に設置されたフードステーションを巡りながら楽しみます。スモークミート、スモークサーモンや生牡蠣など、様々な前菜を一口サイズで好きなだけ食べて回ることができます。その後は屋内に入り、メインダイニングでシェフのクッキングを見ながら季節のコース料理をいただきます。使われる食材は、島で収穫できないものを除いて100%プリンス・エドワード島産です。しかも、マイケルが選りすぐった生産者から選りすぐった食材を仕入れているので、素材の美味しさはお墨付き。
そこで出会った人々と食卓を共にしながらディナーを味わう、温かい時間は至福のひと時。他では体験できない「フィースト(饗宴)」を通して、島に心から歓迎された気分になることでしょう。
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プリンス・エドワード島の灯台
Lighthouses in PEI
美しい灯台の風景を巡る
美しい島の風景に欠かせない個性豊かな灯台。プリンス・エドワード島には61の灯台があり、北米で最も灯台が密集している場所と言われています。『赤毛のアン』シリーズにも灯台が登場しています。赤い土、青い空と海、緑の草地は、島を象徴する3つの色。それらが灯台の白と重なり合い、他にはない情景を作り出します。自動車や自転車に乗って、あなただけの最高の風景を探してみましょう。
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コーブヘッド灯台
Covehead Harbour Lighthouse
プリンス・エドワード・アイランド国立公園の砂丘の中、コーブヘッド湾の入り口の東側の海岸に位置する小さな灯台。かつては、コーブヘッド湾の案内灯として、地元の漁業コミュニティにとって重要な役割を果たしました。高さ8.2メートルの木造の塔の上に、四角い木製のランタンが乗っており、先が細くなっている見た外観が人気で、現在は、プリンス・エドワード島で最も多く撮影されている灯台のひとつとして、島の海洋遺産を象徴する重要な存在となっています。
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ポイント・プリム灯台
Point Prim Lighthouse
1845年に建てられたプリンス・エドワード島で最も古い灯台。島で唯一の丸いレンガ造りのユニークな灯台です。シャーロットタウンのプロビンス・ハウスを手がけた建築家、アイザック・スミスが設計し、リチャード・ウォルシュによって建てられました。灯台の上から眺めるノーサンバーランド海峡の壮大な景色は圧巻です。入場料にはガイドツアーも含まれているので、灯台の物語に触れてみましょう。この場所はコミュニティパークとして整備され、ピクニックやイベントで地元の人たちに人気の「遊び場」となっています。
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セント・ピーターズ・ハーバー灯台
St. Peters Harbour Lighthouse
プリンス・エドワード島の北岸にあるアカディアのルーツを持つ地域に位置するセント・ピーターズ・ハーバー。19世紀中頃から後半にかけて、重要な漁業と造船のコミュニティへと発展しました。今も昔もこの灯台はこの漁業で栄えるコミュニティを支える航路標識となっています。コーブヘッド灯台と同じように約10メートル四方の先細りの木造の塔には、六角形のランタンが備え付けられています。
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ウェストポイント灯台
West Point Lighthouse
プリンス・エドワード島の西部にある白黒の縞々のウェストポイント灯台は、数ある灯台の中でもひときわ特徴があります。この灯台には宿泊施設も併設されており、灯台の中で眠り、穏やかに打ち寄せる波の音を聞きながら眠りにつき、壮大な夕日を楽しむといった特別な体験も。オーナーと灯台の魅力について語ることができるのも、ウェストポイント灯台の魅力です。
島に点在する灯台にはひとつひとつの物語があり、灯台巡りは特別に情緒的な体験となります。プリンス・エドワード島で体験した数えきれないほどの幸せな思い出とともに、これらの美しい風景を心のアルバムに刻みましょう。
ここもチェック!
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French River
美しい風景が溢れるプリンス・エドワード島を象徴する場所として人気を集めるフレンチ・リバー。入江に面したなだらかな丘陵、広大な農地を一望できる風景は、世界中の写真家に撮影されている場所です。
その他の物語
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ノバ・スコシア州/ニュー・ブランズウィック州
大西洋の潮風に誘われて
心が繋がるユネスコ回廊を辿る
カナダ東部の大西洋に面したノバ・スコシア州とニュー・ブランズウィック州。港町が伝える遠洋航海のロマンと、小さなコミュニティに息づく入植者たちの想い。絶景の中にそれぞれの歴史と物語があり、一体感に溢れています。 カナダ入植の歴史に触れて、世界一の干満差を誇る湾で自然の驚異を体感したら、地元の絶品シーフードに舌鼓を打つ。数々の感動がひとつの物語となり、心が繋がるユネスコ回廊を辿ってみましょう。
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ニューファンドランド&ラブラドール州
カナダ最東端の島で出会う氷河が創った彩り豊かな世界
ニューファンドランド島は、太古の地球を体感できる場所。氷河が大地を削り取った巨大なフィヨルド、地上に露出したマントルなど創成期の地球の姿を目の当たりにします。沖にはゆっくり氷山が流れ、海鳥パフィンが舞い、遠くでクジラが潮を吹き上げる。歴史が薫る街や漁村を歩くと人々の賑やかな声が聞こえ、ニューファンドランド独特の伝統や文化に気付きます。最東端の島でカラフルで幸せな時間を。