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COAST TO COAST

カナダでは昔から現在に至るまで、よく“COAST TO COAST” という言葉がよく使われます。2つのCOAST=海岸とはともちろん、大西洋と太平洋です。およそ150年前の建国当時、カナダは大西洋側の4つの州が参加しただけのちっぽけな国でした。それを大西洋から太平洋までつながる大陸横断国家にしようと、東西を結ぶ大陸横断鉄道を建設することにしたのです。

その理由は、イギリスから独立したばかりのアメリカが、北に広がるカナダの大地も呑み込んでアメリカにしてしまおうと狙っていたためでした。カナダ太平洋岸、ブリティッシュ・コロンビア州の北にアメリカのアラスカ州があるのは誰でも知っているでしょう。では、なぜカナダをはさんだ「飛び地」にアメリカの領土があるのかはご存じでしょうか。アラスカはかつてロシア帝国のものでした。ロシア人はホッキョクギツネやクロテンの毛皮を求めてシベリアを西へと進み、ついにベーリング海峡を渡ってアラスカに到達。ここに拠点を構えて今度はラッコを捕らえ、その毛皮を中国の清王朝に売っていました。ところがヨーロッパでの戦争でイギリスなどに負けたため資金難に陥り、中立国だったアメリカにアラスカを売却。それがちょうどカナダ建国と同じ1867年のことでした。飛び地によってアメリカに挟撃されてしまったのがブリティッシュ・コロンビア(BC)州、当時の英国領ブリティッシュ・コロンビア植民地です。カナダ政府にすれば、アメリカに併呑させないよう大陸横断鉄道で“COAST TO COAST” を結び、「BC」をカナダ側に取り込む必要があったのです。

カナディアンロッキーを貫く線路を敷き、蒸気機関車を走らせるという壮大な事業が成し遂げられたからこそ、今のカナダの姿があります。もしバンクーバーがアメリカだったら、もしカナダがロッキーの向こう側にある国だったら、日本からは今よりずっと遠い存在に感じられることでしょう。ちなみに最近では、もう1つのCOAST、北極海も加えて“ COAST TO COAST TO COAST ”という言い方もされています。カナダは建国以来ずっと、海から海までを結び、1つにまとまることを意識している国のように思えてきますね。