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旅先の都会で楽しむ野生の食材探し

旅先の都会で楽しむ野生の食材探し

最近、テレビ番組やレストランのメニュー、イベント、雑誌記事などでよく見かけるようになった「フォレジング」なる言葉。 具体的にどのような意味なのでしょうか。

食材を探し求めて:フォレジング(野生の食材探し)は、具体的には、果実や花、葉、キノコなど、野生の食べられる植物を採集する行為を指します。先住民の間では何千年も前から生活の一部となっているフォレジングですが、最近、世界的なコロナ禍を契機とした意識の高まりを受けて、大きなトレンドになっています。

Foraging mushroom - Destination Ontario

現在、『フォレージ』や『ワイルド・ハーベスト』といったテレビ番組が牽引役となって、野生種のブルーベリーやタンポポからスギナ、ゴボウなど地元産食材にスポットライトが当たるようになりました。『フォレージ』の進行役は、オンタリオの先住民族アニシナアベ族出身のシェフ、ショーン・アドラー。番組では、森や川を歩き回りながら、野生の食材を探します。一方、『ワイルド・ハーベスト』の進行役はアルバータのシェフ、ポール・ロガルスキーとサバイバル専門家のレス・ストラウド。この2人が、アルバータ州、オンタリオ州のほか、アメリカのオレゴン州、カリフォルニア州の村や町を訪ね、狩猟・釣り・料理を楽しみます。

土地とのつながり:どちらの番組でも、野生食材探しが私たちの毎日の食卓といかに深い関係にあるのかがよくわかります。食材探しを通じて、大自然で過ごす時間の楽しさはもちろん、新しい味わいとの巡り合いや食料安全保障の強化、カーボンフットプリントの削減をきっかけに視野が広がるなどさまざまな効果があります。新しい旅のかたち:しかも、フォレジングは、旅で訪れた見知らぬ土地の歴史や風景、人との絆を深める機会にもなります。「食材採集は、マインドフルネスにつながる行為」と言うのは、民族植物学者でBC州のスクワルウェン・ボタニカルズのオーナーでもあるレイ・ジョセフ。スコーミッシュ族出身の先住民でもあります。「植物を前にしたら、まずは目を閉じて自己紹介します。そして、その植物を食材や薬として、どのように活用したいのか語りかけるんです。植物も自分自身も今という瞬間に生き、スコーミッシュ族の先祖たち、そしてこれから生まれくる新たな世代へと流れる長い歴史の一部に自分もつながっていることを体感できます」

カナダの自然の恵み:今、自分が必要としているものがわかっていれば、大自然はたちまち食の宝庫に見えてきます。カナダで採集できる野生食材は豊富にあります。例えば、フキのような茎を食するルバーブは、道端で見つかる植物で、自然の甘みはジャムやクランブル(小麦粉、砂糖、バターを混ぜたそぼろ状の生地)にぴったり。また、タンポポは、スターアニスやレモンバーベナとともにハーブティーにすれば、ヒーリング効果が期待できます。アミガサダケというキノコは、スープやシチュー、ピザ、サラダに使うと深みのある素朴な味わいが得られます。

上手な楽しみ方:もちろん、フォレジングにリスクは付きもの。また、食材採集が許可されている場所かどうかを確認したり、危険な植物を見分ける知識も重要です。カナダでは、ほとんどの国有地や国立公園ではフォレジングが可能です。しかし、州立公園では、フォレジングは生態系を乱しかねないとの理由で禁じられています。私有地や先住民に代々伝わる土地では、フォレジングを始める前に土地の所有者や地元の先住民コミュニティの許可をとる必要があります。また、採集地がある地域や州の規則を確認しておくことも大切です。トロントなど一部の都市では、公立公園や森林、峡谷でのフォレジングをはっきりと禁じています。「Forage & Feast: Edible and Medicinal Wild Plants of Ontario」などのイベントでは、さまざまな情報を入手できます。旅行者にとっては、こうしたイベントなら、フォレジングのためにわざわざ遠くまで足を運ばなくても楽しめるのが大きな魅力。実際、都心部でも多くの理想的なフォレジングのツアーが多数開催されています。都心部やその周辺でのガイド同行ツアーを試してみてはいかがでしょうか。フォレジングに出かけるときは、必ず地元の信頼できるガイドに同行してもらうようにしましょう。

アルバータ州エドモントン:エドモントンのノース・サスカチュワン川流域では、全3時間のフォレジング・ワークショップが開催されています。このツアーでは、野生の食用植物やキノコ類を中心に、家庭での料理法を学ぶことができます。ガイド:ケビン・コソワンは、野生食材の採集・料理をテーマにしたネット番組『From the Wild』での功績が認められて、料理界のアカデミー賞とも言うべきジェームズ・ビアード財団アワードに2度ノミネートされた経験があります。コソワンは、リアリティ番組『ワイルド・ハーベスト』の共同制作者でもあります。開催時期:5月〜8月。

ノバ・スコシア州ハリファックス:シェフのショーン・レイスビーは、ノバ・スコシア州の自然を舞台に食材を採集して料理し、自然の中で味わう野趣あふれるグルメな食体験企画を開催しています。ガイド:グルメ・バイ・ネイチャーは、サステナビリティを損なうことなく自然とつながり、野生食材採集ツアーや料理教室、プライベートダイニングなどの形で四季を通じてアウトドア体験を満喫する企画を開催しています。開催時期:通年営業

foraging berries - Tourism Nova

マニトバ州ウィニペグ:クラフトビールをテーマに、タンポポやローズヒップ、ルバーブなどの食用になる植物を求めてセーヌ川沿いを歩くフォレジング・ツアー。こうした植物は、自家醸造ビールにフレーバーを加える材料として理想的です。ガイド:30カ国以上のブリュワリー1000軒以上を訪ね歩いたキルター・ブリューイングのオーナー。最高のビールを生み出す人、環境、原材料について解説します。開催時期:9月〜10月の期間で希望日を選択。