東海岸のビーチや北部の湖、ジップライン、乗馬、パフィン観察、恐竜に至るまで、カナダは元気いっぱいの小さな子供たちを夢中にし、わがままな中高生はもちろん、パパやママまで好奇心をくすぐられる多彩な魅力に満ちあふれていて家族みんなで楽しめます。ちょっと遠出して新しい街を訪ね、子供たちとじっくり向き合い、カナダの大自然の驚異に触れ、ついでに名物のチーズカードをほおばったり、素朴な楽器ミュージカルスプーンに興じたりしてみませんか。今回は、家族みんなで楽しめるカナダのファミリー向けスポット13カ所をご紹介します。
ブリティッシュ・コロンビア(BC)州:バンクーバー島
バンクーバーのホースシュー・ベイからBCフェリーに乗ってジョージア海峡を渡れば、そこはバンクーバー島。フェリーからはクジラを目にすることも。ターミナルがあるナナイモに到着したら、家族の週末旅行の始まりです。海沿いを北に向かい、ホーン湖の洞窟探検ツアーに参加したり、クームスの屋根の上に暮らすヤギを見つけたり、パークスビルのビーチコマー地域公園やラストレバー州立公園にある潮溜まりでヒトデを探したり。モーニングスター・ファームでは、塩気があって軋むような歯触りがおもしろい名物チーズカードを味わい、ノースアイランド野生動物保護センターでは、保護された子グマのゴルディ、クランペット、エルキーに出会えます。
サスカチュワン州:サイプレス・ヒルズ
サスカチュワン州南西部の角にあるサイプレス・ヒルズ州境公園は、世界最大級の星空保護区でもあります。レジャイナからもカルガリーからも4時間。星空観察からジップラインまで揃っていて、1日だけでは遊び足りないファミリー向けスポットです。公園の南端にあるフォート・ウォルシュ国定史跡では、1870年代に活躍した北西騎馬警官隊が赤い制服を身にまとって登場し、行進を披露します。子供向けには、メイティ(先住民とヨーロッパ人の間に生まれた子孫)の伝承や、リトルビッグホーンの戦いの後、先住民スー族の戦士シッティング・ブルがサイプレス・ヒルズにたどり着いた軌跡を説明するセッションもあります。西部開拓時代の雰囲気あふれるファミリー・リゾート、ヒストリック・リーザー・ランチでは、草原をまわる乗馬体験ツアーがあります。ちびっ子カウボーイにはポニーが用意されます。
マニトバ州:ホワイトシェル州立公園
ウィニペグから車で1時間半のホワイトシェル州立公園は、マニトバ州で特に人気の高いファミリー向けバケーションスポットです。湖、川、滝など水遊びの場が豊富にあり、週末はもちろん、1週間通して楽しむことができます。岩場の多い森を歩く3.4キロのハイキングコース、トップ・オブ・ザ・ワールドからは、鳥になった気分で公園を見渡すことができます(虫除けスプレーをお忘れなく)。元気があり余っている子供たちも十分にエネルギーを発散できるはず。遊び疲れた体を癒すのはファルコン・トレイルズ・リゾートのキャビン。こちらは通年営業のファミリー向けベースキャンプで、雪のシーズンにはキャビンの外にゲレンデが広がります。ファルコン・レイクの町では、グレート・トレイルでサイクリングを楽しんだら、ボードウォークを散歩しながら ミルクシェイクで一息を。
アルバータ州:ドラムヘラー
アルバータ州 で数日を過ごすなら、世界を代表する恐竜の町・ ドラムヘラーへ。ここでアルバートサウルスとアロサウルスの見分け方を学んだ子供たちは、きっと古生物学者に憧れるはずです。カルガリーとエドモントンの間に広がるカナディアン・バッドランドは、街角に恐竜のオブジェ(巨大なティラノサウルスの頭部が展望台になっていて口から外を眺めることができます)が設置されている恐竜の街。ロイヤル・ティレル古生物学博物館には世界的に有名な恐竜の化石が展示されています。州立恐竜公園の近くには、セントロサウルス発掘ハイクというトレッキングコースがあります。年長の子供たちやジュラシックパークファンが集まり、化石探しや、自然が作り出した奇岩・フードゥーの見学に興じています。先住民族のブラックフット族やクリー族の言い伝えによれば、このフードゥーは夜になると目を覚まし、大地を守るとされています。町にはキャビンもありますが、あえて公園でのキャンプを楽しむのであれば、家族揃ってフードゥーの迫力をじっくり味わってみるのもいいでしょう。
オンタリオ州:リドー運河
ハウスボート(キッチンやベッド付きで寝泊まりできるボート)をレンタルすれば、キングストンから オタワまで、対人接触を家族内にとどめる「ファミリーバブル」を維持しながらリドー運河の旅を楽しめます。ル・ボートは、202キロに及ぶ歴史ある運河を自ら操縦するクルージングで家族旅行を満喫するアドベンチャーです。運河北部のスミス・フォールズ からメリックビルまで3泊4日のクルージングの旅では、水門を通過するたびに水の流入・流出が起こるため、子供たちは大喜び。途中のポートにボートを係留し、アイスクリームショップのホーキー・ポーキーで地域限定のクランチーキャラメルを食べて一休み(ほかにも100種類以上のフレーバーあり)。また、博物館に展示されている貨物列車車両に入ることもできます。ボートに水門に列車なんて、家族連れには最高の組み合わせです。
ノバ・スコシア州:サウスウエスト・ノバ・バイオスフィア
家族旅行ならサウスウエスト・ノバ・バイオスフィア(エコパーク)がおすすめ。ここにあるケジムクジク国立公園・国定史跡は星空保護区にも指定されています。先住民ミクマク族に伝わる樺の樹皮を使った伝統的なカヌーづくりは、子供たちでも2、3日あればマスターできます。この手作りカヌーで探検に出発。ミクマク族が数千年に渡って続けてきた川の旅を体験し、子連れにもやさしいマージー・リバー・シャレー&ネイチャー・リトリートではティピーに宿泊できます。公園の南側は海辺のエリア(ぜひテイクアウトを利用してピクニックを)。一息ついたら今度はディープ・スカイ・アイ天文台へ。天文学専門家による星空観測のワークショップに家族で参加して、天の川や星座の美しさを満喫します。ほかにも子供向けには、星空の下、川辺のキャンプファイヤーで焼きマシュマロも人気のアクティビティです。
ニュー・ブランズウィック州:ファンディ湾
セントジョンの東にあるファンディ・トレイル・パークウェイで家族みんなでファンディ湾 へ。迫力ある潮の満ち引きや、波の浸食が生み出したキノコのような奇石に出会えます。海岸沿いに並ぶ奇石は、その不思議な形状からフラワーポット・ロック(植木鉢状の岩)とも呼ばれています。世界最大の干満差を誇るファンディ湾ですから、好奇心旺盛な子供には、干潮から満潮に変わる様子をぜひ見届けさせたいもの。満潮になったら、ファンディ国立公園のポイント・ウルフ・ビーチまでハイキングがてら足を延ばしてもいいでしょう。続いて東に向かい、ホープウェル・ロックスへ。潮が引いて顔を出した海底を家族揃って歩き回れば、不思議な感覚に陥ります。セントジョンの反対側にあるニュー・リバー・ビーチ州立公園は、キャンプ場があり、子供たちは砂のお城作りや宝探しに大喜びです。
ケベック州:州都エリア
家族揃って夢は大きく持ちたいもの。歴史の街・ケベックシティから1日で訪問できる旅に出かけましょう。ダウンタウンからわずか15分のところにあるのが、高さ83メートル(実はナイアガラの滝より高さがあります)のモンモランシーの滝。パルク・ド・ラ・シュット・モンモレンシーのジップラインやヴィア・フェラータは、年長以上の子供や大人にも大人気。デイリー・バーのソフトクリームで、大絶叫で疲れた喉を休めましょう。さらに東に30分進むと、サンタンヌ渓谷。ここの最新アクティビティ、エア・キャニオンで子供たちは再び絶叫すること間違いなし。リフト型のシートに座って高さ90メートルの空中を滑空するような体験が味わえます。普段は携帯電話を手放せない子供たちも、このときばかりは違うはずです。携帯不要の時間はまだまだ続きます。ジャックカルティエ国立公園ではローレンシャン高原の山中でユルトに2泊します。ユルトとは遊牧民が使う伝統的な円形テントです。
ノースウエスト準州:グレートスレーブ湖周辺
釣り好きのファミリーにおすすめなのが、イエローナイフ周辺の湖。この辺りのフィッシング・ロッジは水上飛行機などで直接アクセスします。カナダならではの家族旅行にぴったり。釣りだけでなく、オーロラ観賞や野生動物観察なども楽しめます。2泊だろうが7泊だろうが、旅のスタートは水上飛行機から。すでにこの時点で「うわー」と歓声があがります。森の木々をかすめるように低空飛行に入ると、水上に着水。もうそこは人里離れたオールインクルーシブ型のリゾートです。例えば グレートスレーブ湖の北の入江に佇むフロンティア・ロッジ もそんなリゾートの1つ。同じく湖畔のファミリー向けリゾートとしておすすめは、ブラッチフォード・レイク・ロッジのオールド・トラッパーズ・キャビン。こちらはちょっと変わった楽しいキャビンです。シングルルームタイプ(子供でも利用可能なベッド付き)のデザインは、まさしくログキャビンの王道と言える内容です(2020年9月現在、同地域の訪問は地元民に限られていますノースウエスト準州外部からの旅行者は、イエローナイフ、イヌビク、ヘイ・リバー、フォートスミスのいずれかで14日間の自己隔離措置が義務付けられています)。
ユーコン準州:ノース・クロンダイク
ホワイトホースからドーソン・シティ、さらにゴールドラッシュ時代を彷彿とさせる地域へと続くノース・クロンダイク・ハイウェイ。ハイウェイを走ること5日間。かつてなら金鉱へ続く道でした。荒野の雰囲気漂うムース・クリーク・ロッジ を背景に家族で写真を1枚。この辺りでは子供たちは砂金採り体験、続いて見晴らしのいいファイブ・フィンガー・ラピッズへと階段の段数を数えながら登り、おやつはブレーバーン・ロッジ名物の甘くて巨大なシナモン・バンズ。途中にはキャンプ場 が点在し、開拓時代の暮らしを追体験できます。例えば、スチュワート・クロッシング地区でシルバー・トレイル に立ち寄れば、ゴールドラッシュの陰でシルバーラッシュもあったことがわかります。
ニューファンドランド:アバロン半島
アバロン半島沿岸、セントジョンズの南部では、クジラや海鳥、氷山などが見られるため、泊りがけの野生動物観察プランを練ってみましょう。ウィットレス湾自然保護区からは、この3つ(さらにパフィンも)に出会えるボートツアーがあります。南西部にはセント・メアリー岬自然保護区。北米では一番手軽に海鳥のコロニーを観察できる場所として知られ、ちょっと歩くだけで高さ60メートルのバードロックと呼ばれる巨大な岩があります。岩はカツオドリの営巣地となっていて、何千羽もの白いカツオドリに覆われた様子は、さながら大きなアイスクリームのようです。半島の南端にあるセントビンセンツの玉石が広がるビーチは、ザトウクジラの観察に最適なスポット。海岸からホエール・ウォッチングができるのです。また、春から初夏にかけては氷山ウォッチングも楽しめます。この近くには、ユネスコ世界遺産のミステイクン・ポイントがあり、岩場には地球最古の深海起源の化石が見られるとあって、生命に対する子供の好奇心を育む場になります。もちろん子供だけでなく、ナチュラリストの好奇心もくすぐります。
プリンス・エドワード島州:東海岸沿いのドライブ
ポインツ・イースト・コースタル・ドライブ (プリンス・エドワード島の東海岸沿いを走る475キロのルート)は、昔ながらの海岸の町や50以上のビーチ、6つの灯台、12の州立公園、グリニッジ国立公園などが点在します(せっかくなので子供たちには、こうした見どころがいくつあったか数えてもらいましょう)。途中で数日滞在するなら イン・アット・ベイ・フォーチュンの近くで。ここはシェフのマイケル・スミスが所有するレストラン用の農場やリゾートになっていて、子供たちは標識に沿って進んでいくと「ハッピー・ピッグ」と呼ばれる養豚エリアにたどり着くといった工夫も。大人はソーリス・ビーチでのランチタイム用に、好きなメニューを選んでピクニックランチを準備しましょう。ビーチでは、水温もそれほど低くない浅瀬で子供たちが歓声をあげて水遊びを楽しめるはずです。ソーリスからは、フィドリング・フィッシャーマンのロブスター漁用のボートでクルージング。これも子供たちには大人気のアクティビティで、ミュージカルスプーンと呼ばれる楽器を演奏して楽しみます(ついでに夕食のロブスターを仕入れることもできます)。海岸に戻ったら、素朴な小屋のような雰囲気で夜を過ごします。キャンプ風のカラフルなキャビンは子供たちに選んでもらいましょう。
ヌナブト準州:イカルイトとカウマールヴィート準州立歴史公園
イカルイトの北端にあるフロビッシャー湾(オタワから飛行3時間)でカヤックやハイキング、カリブー生息地でのキャンプなど冒険気分の家族旅行が楽しめます。海も陸も北極圏らしい荒々しい光景が広がり、子供たちにとっては楽しいアクティビティが盛りだくさん。例えばツアーなどを手がける イヌクパック(イヌイット語で「やさしい巨人」の意味)では、犬ぞりで活躍する犬と触れ合えます。また、犬ぞりのマッシャー(犬ぞり使い)の動作や掛け声(「ジー」は右、「ホー」は左など)も子供たちには興味津々です。また、現地ガイドの案内によるカウマールヴィート準州立歴史公園のツアーもあります。ボートで12キロ先の小さな島にあり、「カウマールヴィート」とは「光る場所」の意味があります。かつてテューレの人々が芝つきの土を積んで造った家の残骸がこのように見えることが理由です(注:2020年9月現在、この地域は閉鎖されており、旅行者の立ち入りは禁止されています。今後の旅の希望リストに入れておきましょう)。