スー・セント・マリーにあるアルゴマ美術館の元館長兼キュレーターのマイケル・バーチは、当地で活躍した画家集団「グループ・オブ・セブン」の主要な研究プロジェクトに従事していました。このプロジェクトでは、このカナダを代表する芸術家グループが象徴的な作品を描いたアルゴマとスーペリアのノースショアの正確な場所を特定し、文書化、解釈することを目的として、広範な調査とフィールド調査を実施。この調査結果は『Painted Land』というドキュメンタリー映画として、2015年10月に放送用にリリースされました。

物語は1918年に始まります。3人の画家と彼らを支えていたパトロンらが初めてアルゴマを訪れたころは、まだ無名の存在でした。しかし、アルゴマでのわずか3週間の滞在が10年間後にカナダの芸術をがらりと変え、カナダらしさを生み出すことに。1920年5月この3人の画家に新たに4人の同志が合流して「グループ・オブ・セブン」が誕生しました。
7人はアルゴマの原風景に心を激しく揺り動かされましたが、この自然を切り拓く原動力になったのが鉄道です。グループ・オブ・セブンは秋になると必ずトロントを出てアルゴマを訪れました。そこには森全体が見事な秋色に染まるアルゴマらしい絶景があったからです。当初2年間は貨物車で毎日現地を移動しては、周辺を徒歩やカヤックであちこちまわり、この土地らしさを求めて心を打つような、構図探しに明け暮れました。彼らはそれまでの植民地美術から脱却して、カナダならではの美術を志向するモダニズムの火付け役となりました。

アルゴマはまるでタイムマシンのような場所です。グループ・オブ・セブンが描いた景色の多くは今も変わらずに残っています。例えば、アガワ渓谷の旅で75マイル地点のモングース湖は、グループ・オブ・セブンが最初に描いた場所です。また、傑作とされるJ・E・H・マクドナルドの《Solemn Land》の景色が92マイル地点に見えてきます。グループ・オブ・セブンの作品はアルゴマの醍醐味を見事に捉えていて、今もその感動が変わらずにそこにあり今後も続いていくはずです。
マイケルが館長を務めていたスー・セント・マリーのアルゴマ美術館には、グループ・オブ・セブンが残した本物の作品が多数収容されています。カナダらしさの象徴的な存在であるアルゴマの原風景と共に、カナディアン・アートを鑑賞してみましょう。