「大切なのは、旅の目的地ではなく、そこに至る道のりである」。そんな言葉を残したのは、哲学者のラルフ・ワルド・エマーソンです。カナダならではの魅力を余すところなく堪能できる最高の旅の形を1つ挙げるとすれば、鉄道の旅ではないでしょうか。そう考えると、なるほどエマーソンの言葉もますます説得力があります。鉄道の旅は、のんびりリラックスしながら次々に目に飛び込んでくる車窓の絶景を味わえるだけでなく、活気あふれる多様な文化を肌で感じる喜び、にぎやかな都会での街歩き、その道すがらに目にするさまざまなランドマークなども楽しむ機会もあります。
しかも、鉄道の旅は、快適で、環境にも優しく、世界中から集まってくる旅仲間との素晴らしい出会いの場になることも。カナダを走る鉄道の旅の中でも特に注目の旅をご紹介します。
北極地方発見の旅
マニトバ州ウィニペグからVIA鉄道で2昼夜をかけて約1600キロを走破する旅。車窓からカナダ北部に広がる大地を眺めながら、めざすは終点、チャーチルです。 マニトバ州北部に位置するチャーチルへのアクセスは、鉄道か飛行機のみ。そんなチャーチルでは、野生のホッキョクグマ(シロクマ)やベルーガ(シロイルカ)のウォッチング、夜空に揺らめくオーロラ観賞、カナダに暮らす先住民の文化や伝統との出会いといった貴重な機会も。
ゴールドラッシュを支えた列車の旅
ユーコン準州のクロンダイク地方で巻き起こったゴールドラッシュの絶頂期、そんな一攫千金に沸いていた1898年に建設された鉄道が、ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルート鉄道です。往時を彷彿とさせるレトロな列車でゆったりくつろぎながら、沿線の滝や氷河、トンネル、山々と多彩な絶景を楽しむことができます。圧巻は、米アラスカ州とカナダのブリティッシュ・コロンビア州を結ぶホワイト・パス(ホワイト峠)の頂上まで、高低差914メートルをわずか20分で登り切る区間です。
同鉄道は、米アラスカ州側にあるスカグウェイの港を出発し、ブリティッシュ・コロンビア州フレイザーとユーコン準州カークロスを経由し、ユーコン準州州都であるホワイトホースへと至ります。このルートは夏期限定の運行です。
肌で感じる紅葉シーズン真っ只中
紅葉の盛りを堪能するなら、アガワ渓谷の列車ツアーで決まり。オンタリオ州北東部のスー・セント・マリーを出発し、1日かけて大自然に包まれた湖畔を走る全367キロのツアー。沿線では迫力の花崗岩岩層のほか、黄色、深紅色、金色にきらめく紅葉の森の姿が楽しめます。渓谷自体は通年開放されていますが、9月下旬から10月初旬がベストシーズンです。
カナダ西部の魅力を満喫
ロッキー・マウンテニア鉄道の「ファースト・ パッセージ・トゥ・ザ・ウエスト」と呼ばれるルートは、アルバータ州バンフとブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーを結ぶ路線で、途中、カムループスを経由します。2日間の列車ツアーでは、いくつもの峠を越え、感動的な渓谷や湖の絶景が車窓に広がります。窓が天井まで届くほどの明るいドーム列車なのでパノラマビューが楽しめます。同鉄道の「レインフォレスト・トゥ・ゴールドラッシュ」ルートも人気の路線。世界的なスキーの町・ウィスラーを出発し、クェネルを経て、趣のあるアルバータ州ジャスパーに至ります。
カナダ横断の旅
変化に富んだカナダの景色を心ゆくまで満喫したいなら、VIA鉄道の伝説の列車「カナディアン号」におまかせを。 生涯一度は体験してみたいカナダ横断の旅。トロントを出発し、4日間かけて4345キロ以上を走破。その間、オンタリオ州、マニトバ州、サスカチュワン州、アルバータ州、ブリティッシュ・コロンビア州を駆け抜けます。
カナディアン号は、森や湖、山、草原などカナダならではの広大な風景をたっぷり味わえます。大陸横断という長距離の旅らしく、途中下車も認められているため、にぎやかな街を散策したり、地元の素敵な人々との交流を楽しんだりするチャンスも。