幻想的なオーロラとの出会いは、多くの旅行者にとって夢。そもそも、いったいどこで、どのようにすれば見られるのでしょうか。
オーロラの仕組み:最初にオーロラの正体を理解しておきましょう。オーロラは、太陽から吹きつける荷電粒子が地球の大気圏に入るときに大気(酸素や窒素)とぶつかることで発生します。その結果、まばゆいほどの色とりどりの静寂な光のショーが夜空で繰り広げられます。特に、地球の磁極に近い地域では、冬の夜空にはっきりと現れます。幻想的なオーロラは、漆黒の夜空を舞台に驚くほどのスピードで四方八方に“踊り回る”激しい動きで知られています。オーロラに関しては、有名なチャーチル北方研究センターの説明が非常に詳しくてお薦めです。
時期・場所:対象地域はユーコン準州、ノースウエスト準州、ヌナブト準州です。そのほとんどの地域がオーロラ・オーバルの範囲にあり、観賞を邪魔する光害も最小限に抑えられています。観賞に最良の時期は、夜が長くて、空気が冷たく透明度が高い冬。こうした条件が揃った冬の夜空は、オーロラがはっきりと見えます。非営利団体のアストロノミー・ノースでは、カナダ宇宙庁の協力の下、オーロラ予報を発表しています。
オーロラを取り巻くさまざまな考え方を知る:カナダの北部には、多くの先住民が暮らしており、それぞれのオーロラの解釈につながる独自の信仰や伝説があります。オーロラ観賞を楽しむうえで、こうしたさまざまな考え方を知ることも大切です。イエローナイフのB・ディーン・アドベンチャーズが主催するオーロラ・ツアーでは、実際に先住民の長老から直接伝説や物語を聞く機会があります。伝統的なドラム演奏や直火料理の魚を味わう食事もセットになっています。
オーロラといえば北方地域:世界最高のオーロラ観賞スポットといえば、ノースウエスト準州。実に年間240日も観賞するチャンスがあるのです。ノースウエスト準州で特にお薦めは、イエローナイフのブラッチフォード・レイク・ロッジ&ウィルダネス・リゾートとオーロラ・ビレッジの2つ。マニトバ州チャーチルも世界のトップ3に入る有名なオーロラ観賞地です。実際、神秘的なオーロラを求めて世界中から研究者がこの地に集まってきます。ツアーオペレーターのフロンティアーズ・ノースでは、暖房完備で内部にバーまで備えた大型ツンドラ・バギーで行く真夜中のオーロラ観賞ツアーを実施しています。ヌナブト準州もオーロラ観賞ではトップを争う地域。特に10月から4月はベストシーズンです。オーロラを楽しんだ翌日は、ホエール・コーブに足を延ばせば、釣りやベルーガ(シロイルカ)ウォッチングが楽しめます。また、アークティック・ヘイブン・ウィルダネス・ロッジにとどまり、日中は伝統的なカリブーの季節移動のルートをたどり、夜は魅惑の天体ショーを楽しむのもいいでしょう。ニューファンドランド&ラブラドール州には、手つかずの荒野が広がっており、壮観なオーロラの夜空の下、人里離れた地でアウトドア・アドベンチャーを満喫できます。オーロラを見るなら、トーンガット山脈国立公園がお薦めです。感動の風景、40億年前に形成された岩石層、イヌイット(カナダ北部に住む先住民)の人々の伝統的な暮らしがオーロラ観賞の旅をさらに忘れがたい思い出に変えてくれるはずです。アルバータ州北部には、アサバスカ大学の地球物理学観測所があります。こちらではオーロラが地球に及ぼす磁気の影響について研究しています。実際の研究成果に触れるなら、バンフ国立公園で同大学が運営する「オーロラ・ウォッチ」をチェックしましょう。オーロラが出現する可能性の高い時期を考慮しながら旅の計画を立てることができます。
スポットライト:ユーコン準州でオーロラを楽しむ旅程
ユーコン準州の広大な大地には、陸からはもちろん、空からも見られるなど、オーロラ観賞のチャンスにあふれています。ユーコンでは9月から4月までオーロラ観賞が楽しめます。冬に入って最初の数週間は特にオーロラが活発に出現します。
1日目:旅は空路で、ユーコン準州州都のホワイトホースに入るところから始まります。どこまでも広がる荒涼とした氷原、雪や氷に包まれた森林、そしてカナダ最高峰の山々が見られます。
➢ 宿泊先は、ホワイトホースにほぼ半世紀ぶりに新規開業したホテル、レイブン・インへ。ユーコンに古くから伝わる歴史や自然の遺産に敬意を表した今風のおもてなしを大切にしています。ユーコン産のビールやサイダー(シードル)を揃えた“鉄道バー”やユーコン川を見渡す屋外温水プールなど、見どころの多く、ゆったりと過ごすことができます。
➢ ゲートを出てすぐにオーロラ観賞が楽しめます。Who What Whereツアーズの主催するオーロラ・ツアーは、まず街の明かりとは無縁の地に移動。趣のある焚き火で暖を取りながら(もちろん、ブランケット、チェア、ホットドリンクも用意されています)、美しいオーロラの出現を待ちます。
2日目:翌朝は、ムクトゥク・アドベンチャーズ主催の半日の犬ぞりツアーに参加し、ユーコンの伝統をたっぷり体験します。犬ぞりを操縦することを「マッシュ」と言います。犬ぞり体験では、このマッシュ術を学び、川や森のコースを走り、冬のワンダーランドを駆け抜けます。
➢ 食事はギャザー・カフェ・アンド・タップハウスがお薦め。宿のレイブン・インからほど近いところにある居心地の良い地元のレストランです。地元産食材を生かした料理や極上のカクテルが堪能できます。
➢ 夜はティンティナ・エアが提供する素敵なオーロラ観賞フライト。雲間を抜けると、色とりどりのオーロラが夜空に広がっています。空の旅は全1時間。熱々のホットチョコレートとスナックが付きます。寒さ知らずのフライトで、生涯に一度のアドベンチャーをぜひ。
3日目:翌朝は車で2時間のクルアニ国立公園へ移動。この日の宿泊はマウント・ローガン・エコ・ロッジ。オールインクルーシブ型の宿で、グルメファンも納得の食事、温浴・サウナ施設、ファイヤーピット(焚き火台)、さらには周辺の荒野を行くガイド同行日帰りツアーまですべて料金に含まれています。宿泊設備のタイプはさまざま。プロスペクター・テント(かつて開拓者らが使用したといわれる家形テント)、コンパクトな樽型キャビン、さらには本物のスクールバスを転用したキャビンもあります。
➢同ロッジ主催のオーロラ撮影ツアーもお見逃しなく。ガイドがオーロラ撮影のコツや裏技、上手な撮影方法を伝授します。
4日目:翌日は、カナダ最高峰のローガン山もあるクルアニ国立公園へ。ロッキング・スター・アドベンチャーズ主催の氷河見学ツアーは飛行機で空から広大な氷河の景色を楽しみます。
➢ その後は、スノーモービル、スノーシュー、電動ファットバイクでユーコンの雪深い景色を堪能します。4日間の旅程はここまで。でも、ここで味わった感動の日々が忘れられず、きっとまた戻ってきたくなるはずです。