冬だからこそ体験できるカナダの国立公園の楽しみがあります。カナダは全国に実に48カ所もの国立公園・国立公園保護区があり、それぞれに個性あふれる特徴があり、一見の価値があります。雪をいただいた山々、透き通るような水をたたえた湖、幻想的なオーロラ、雪景色の中を歩くエルクやムース(ヘラジカ)…。こんなに神秘的で、元気をもらえるものがほかにあるでしょうか。日常を逃れてどこかでほっとしたい。そんな思いに応えてくれるのが、カナダの多彩な国立公園。冬はぐっと冷え込みますが、寒いからこそ輝きを増すのがカナダの公園の醍醐味です。高級感あふれるグランピングから、スノーシューイングまで、冬に楽しめる意外な国立公園を紹介します。
アルバータ州:バンフ国立公園
山々や氷河湖に囲まれた地というと、アルバータ州バンフなら数えきれないほどありそうですが、中でもこの国立公園の景色は格別。
レイク・ルイーズからジョンストン渓谷へと続く銀世界の風光明媚な〝野生動物街道〟へ。バンフ〜レイク・ルイーズ地域の中でも特にお薦めのドライブルートは、ボウ・バレー・パークウェイ(1A)です。美しい景色が堪能できるこのルートは雪の季節になると冬のワンダーランドに変身します。針葉樹林、山々、草地が雪に覆われるとあって、野生動物観察には絶好の条件が整います。運が良ければ、エルクやムース、ときにはオオカミまで目撃することもあります。ルートを20分ほど進むと、ジョンストン渓谷の駐車場があります。ここから、きれいに整備されたトレイルを歩いていくと、いくつもの凍結した滝のある渓谷にたどり着きます。足元に注意しながら、しばらくここで新鮮な空気と自然美を味わいます(滝の上のほうには、氷壁を登るクライマーの姿を目にすることも!)。
そして、カナダを代表する湖の1つ、ルイーズ湖。氷が張ったら、スケート靴をレンタルして天然のスケートリンクを楽しみませんか。毎年1月になると、バンフ・アイス・マジカル・フェスティバルが開催されます。氷結した湖上には巨大な氷の城が登場し、アイススケートがさらに楽しい思い出になります。そして、1日の締めくくりは天然温泉でたっぷりくつろぎ、疲れを癒やしてはいかが。天候にもよりますが、雄大な山々の向こうに沈む夕日、ちらほらと舞う粉雪の風情ある瞬間も。寝湯のエリアでは横になって夜空を見上げながら温泉を楽しむこともできます。バンフ国立公園での1日を思い出しながら、次の訪問の計画を練るのも楽しいはずです。
ブリティッシュ・コロンビア州:クートニィ国立公園
クートニィ国立公園は、1920年にカナディアン・ロッキーを貫く新たな道路建設の合意の一環として誕生しました。
氷の張った川や湯気が立ち上る温泉が魅力の同公園は、すでに100年以上の歴史を誇ります。荒野と変化に富んだ山の景色で知られる同公園は、冬好きにはたまらない楽園です。クロスカントリースキーやスノーシューでバックカントリートレイルの冒険を安全に楽しめるほか、アイスクライミングで汗をかき、オオツノヒツジやエルク、ムースといった野生動物観察に興じ、ラジウム温泉で締めくくり(営業状況や営業時間、安全対策などの情報はウェブサイト参照)。ファースト・ネーションズ(北米インディアン)の隠し湯として、またカナダ西部入植者たちにも愛された同温泉は、カナディアン・ロッキーに抱かれた素晴らしいロケーション。長きにわたって旅人たちの疲労回復や気分転換に重用されています。この公園は、美しさはもとより、荒野の光景にも定評があります。冬期は路面やアウトドア、特にバックカントリーでの安全を考慮しましょう。同行メンバー全員が雪崩の知識を身につけ、万全の安全対策、安全装備で臨んでください。
ユーコン準州:クルアニ国立公園・保護区
この公園内には、カナダ最高峰(5959メートルのローガン山)やカナダ最大の氷原があるほか、北米一の遺伝的多様性を誇るグリズリーの生息地としても知られます。
旅先をどこにするのか迷っていたのなら、この公園がお薦めです。絶景に加え、激しいものから、のんびり楽しめるものまで、あらゆるアドベンチャーがそろっています。クロスカントリースキーやスノーシューでクルアニの広大な荒野を踏破するもよし、美しいキャスリーン・レイクで穴釣りに興じるもよし。湖畔のシェルターでゆったり暖を取ることもできます。冬期は湖が結氷するため、探索できる範囲がさらに広がります。広々とした空間をクロスカントリースキーやスノーシューで歩き回ったり、穴釣りで釣り上げた魚をバックカントリーのキャンピングスポットで早速料理して味わったりすることも。夜は空を見上げれば、オーロラが現れます。
ケベック州:モリシー国立公園
モリシー国立公園は、モントリオール島に匹敵する面積を誇ります。言い換えれば、広大な遊び場ということ。
ケベック州の公園は、気温が下がるほどに、ダウンタウンに引けを取らないほど活気にあふれます。モリシー国立公園内だけでも湖や森林は150以上もあり、冬のアクティビティもたっぷり。標識が整備された80キロ以上に及ぶトレイルでは、クロスカントリースキーがお薦め。トレイル沿いには暖房設備のある休憩所もあり、ケベック屈指の絶景が楽しめる地域に設置されています。トレッキングブーツやスノーシューに履き替え、全長75キロのスノーシュートレイルを歩くと、森林や湖、小川の見事な大パノラマに出会えます。トレイルは各種あり、利用者のレベルに合わせて最適なトレイルを選ぶことができます。静寂の森の奥に分け入ると、冬のキャンピング施設に滞在できるほか、テントとキャビンを足して2で割ったような「オテンティック」という宿泊施設も用意されています。
マニトバ州:ライディング・マウンテン国立公園
かつて19世紀末から20世紀初めにかけて先住民族と連邦政府との間で先住民族の権利、義務、先住民族と政府との関係などについて定められた「歴史的協定」がいくつも結ばれました。その1つ、「協定2」によって保証された土地に誕生したのが、ライディング・マウンテン国立公園です。同公園は、協定2、同4、同1により、先住民族アニシナアベ族と密接な関係にあります。
ウィニペグから3時間。ライディング・マウンテンは、驚くほど多様な野生動物が暮らし、冬のアドベンチャーの楽園でもあります。大自然の中をバイソンやムース、シカが行き交い、広大な森林で草を食む姿は感動の一コマ。ワサガミングの町を通る独創的なトレイルで極太タイヤのファットバイクにチャレンジしたり、公園内でクロスカントリースキーやスノーシューイングに合わせて設計された数百キロの雪のトレイルに挑んだりするのも醍醐味です。ワサガミングの奥地やさらに人里離れたムーンレイクには、宿泊施設として、ラスティックリュクス(素朴さを残しつつ高級感も兼ね備えた)の冬季仕様のオテンティックが用意されています。